手の上/桂さん
「小五郎さん、今大丈夫ですか?」
とんとん、と控えめに襖を叩かれる。鈴のような声で私の名前を呼んでいた。
「ああ大丈夫だよ」
すっと襖が開かれてお盆を持った彼女が入って来た。
以前は着物の裾を踏んで転んだりしたこともあったが、今では綺麗な所作が身についている。実家が道場と言っていたから元々そういった所作が身につく素質はあったのだろう。
「どうしたんだい?」
「あっあの、これ一緒に食べませんかっ」
お盆に乗せられていた皿にはいくつもの大福が乗っていた。
「?これはどうしたんだい」
「前に小五郎さんに教えて貰ったお店で買ってきたんです」
「ああ、あそこの大福か。それは楽しみだ」
「お茶も入れてきたのでどうぞ」
「ありがとう。しかし何故急に?」
「あ、えっとその…」
「うん?」
「…今日、私のいたところではバレンタインって言って」
「ばれん、たいん?」
「はい、その…好きな人に甘いものをあげる日なんです」
「…紘」
頬を赤らめて少し俯いた彼女の手を取る。弾かれたようにあげた顔に少し微笑んで私は手の甲に唇を寄せた。
「!!こっ小五郎さん!?」
「すごく嬉しいよありがとう」
「は、はい…」
更に赤くなった彼女が愛しくてつい抱き寄せた。
HappyValentine!