首/土方さん


「土方さん、入っていいですか」

突然襖の外から声をかけられて、俺は咄嗟に発句集をしまう。いいぞ、と声をかければ紙袋を抱えた紘が入ってきた。

「おう、どうした」

「宝積屋さんのお饅頭を買ってきたんです。土方さんも一緒に食べません?」

「そういうのは総司と食え。俺はあんまり甘いものは…」

「一個でいいですから!」

「お、おう」

こいつが我が儘を言うのは珍しい。饅頭に何があるのか知らないが、とりあえず一つ取って口にした。
当然といやぁ当然だが、…甘い。
けどまぁこいつの手前、無理無理一個食い切る。ちらりと視線をやれば困ったように眉を下げていた。

「…ごめんなさい土方さん」

「なんだ毒でも入ってんのか?」

「違います!その、無理矢理食べさせちゃって」

「なんだ、今更か?」

「ごめんなさい…」

「何かあんのか」

「…今日バレンタインって言うんです。好きな人に甘いものをあげる日で…」

「…なるほどな」

俯いて言う紘に漸く合点がいく。袋を抱えたまま俯きっぱなしの紘の腕を引く、どさっと紙袋が落ちる音を聞きながら俺は首筋に口づけた。

「っ…!?」

驚いたように硬直する紘の首筋から顔を上げてニヤリと笑ってやる。

「お前の方が甘いな」

そう言い放てば紘は真っ赤な顔でばか、と呟いた。









HappyValentine!


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