掌の上/武市さん


「紘」

「半平太さん」

台所に立つ愛しい彼女の名前を呼ぶと長い髪を揺らして振り返る。そしてふわりと微笑んだ。

「ちょうどよかった、今半平太さんのところ行こうと思ってたんですよ」

「僕のところに?どうして?」

「おしるこ作ったんです。一緒に食べませんか?」

「君が作ったものならなんだって食べるよ」

彼女から椀を受けとって僕の部屋へと運ぶ。
襷掛けを外した彼女に椀を渡して二人で一口。

「うん、美味しいよ僕のいいお嫁さんになれるね」

「は、半平太さん」

すぐに赤くなって慌てる紘が可愛らしくてついからかいたくなってしまう。

「紘…」

「ちょ、半平太さんだめ」

唇を寄せようとした僕に彼女は手を出して止める。ぽふりと僕の口元に被せられた小さくて柔らかな手。
その手首を捕まえて掌に口づけを落とした。

「はっ半平太さん!」

わたわたと慌てる紘。とても可愛らしく、もっと触れたくなる。
捕まえたままの掌をぺろりと舐めた。

「!!はっ…」

「ふふ、ごめんごめん」

ぱっと手を離して頭を撫でてやると拗ねたような困ったような顔で彼女が押し黙る。

「怒っている顔も愛らしいね、君は」

鼻をつんと押してやると真っ赤な顔で口をぱくぱくさせた。









HappyValentine!


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