額の上/慎ちゃん


「しーんーちゃんっ」

少しだけ開けた襖から、ひょこっと姉さんが顔を覗かせた。

「姉さんどうしたんスか?」

「お団子買ってきたんだけど食べない?」

「わっやった!食べるっス!」

そう言うと姉さんはニコニコ笑って部屋に入ってくる。手に持っている団子を卓に載せてどうぞと笑った。

「いただきます」

態と恭しく手を合わせると姉さんは可笑しそうにくすくす笑う。可愛い。
美味しい団子が食べられて、好きな人がそばにいるって言うのはいいなぁなんて思った。

「でも姉さん、何で急に団子買ってきたんスか?」

もぐもぐと団子を食べながら聞くと姉さんは少し言いづらそうに口をもごもごさせる。何かと思って言葉を待てば、少しの間の後こう言った。

「その、今日ねバレンタインって言って、好きな人に甘いものをあげる日なの…」

「へ、」

俺は驚いて口からぽろりと団子の串を落としてしまった。赤い顔をして姉さんが好きな人、と言ったのだ。それは紛れも無く、俺のことで。

「あっ、みんなの分は買ってないからこのことは内緒ね!」

俺だけ、が、特別、で。

「きゃっ!」

俺は無意識の内に姉さんの腕を引いてその額に口づけを落としていた。
至近距離で真っ赤になった姉さんの顔を見るに付け嬉しくなる。
姉さんにこんな顔させられるのは、今俺だけなんだ。

「姉さん、…紘、好きっス」

耳元で内緒話みたいに言ったら、更に赤くなって耳元で話しちゃダメ!と怒った。
ああもう、可愛くて仕方がない。









HappyValentine!


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