同窓会で初恋の人と再会、実は両想いだったと発覚



ガヤガヤと賑やかな居酒屋に入ると気付いた一人が手を挙げた。

「久しぶりー!」

私は曖昧な笑顔を返して座敷に上がった。










私は中学をとうに卒業して大学へと進学していた。お酒が飲める年齢になり、世間的にも許された今日、久しぶりに彼らと会うことになった。
ベタと言えばベタな成人式のあとの同窓会。
さすがに大学まで行くと同じ学校に進む友達もおらず、大人びた元クラスメートと会うのは実に五年振りだった。





「乾杯!」

最近飲めるようになったカシスオレンジを口に含むとアルコールの苦味が口の中に広がる。
リキュールの甘さがそれをごまかした。

とん、と肘が隣に来た人に当たって肘を引く。振り返りながら形式通りに謝罪を口にした。

「あ、ごめん」
「ええよ」
「白石くん」
「久しぶりやな、元気やった?」
「おん」

白石くんはクラスメートの一人だった。昔から大人っぽい彼だったが五年経った今では大人の男と言う雰囲気を纏っている。

「月城さんは今どこの大学いっとるん?」
「女子大だよ、すぐ近くの。白石くんは?」
「俺は医大やねん、謙也と同じとこ」
「あ…そなんや」

“謙也”と言う名前にドキッと心臓が跳ねた。
あれから私は告白することも出来ずにただ少し仲のいいクラスメートのまま中学を卒業した。
高校も離れて、五年間会うこともなく今日まで来てしまった。

「そういえば謙也遅いなぁ」
「悪い!遅なった!」

白石くんが呟いた途端にけたたましい音を立てて居酒屋のドアが開く。

「遅いで謙也ぁ!」
「スピードスターの名が泣くでぇ!」
「うっさい!古い話すな!」
「謙也ぁ遅いでー」

白石くんがジョッキを挙げて謙也くんに話かける。
するとクラスメートの囃し立てに文句を言っていた彼の目がこちらを向き、
目が、合った。

「あ…」
「久しぶり、やな…」
「お、ん」

謙也くんがこちらに歩いて来て、私の反対隣に座る。白石くんも謙也くんも昔からすごく人気があったからこの位置は流石に他の女子に怨まれそうだ。

「あ、私ちょっと…」
「待っ…」

席を外そうとした私の腕を謙也くんが掴む。
うろたえた私に謙也くんが手を離した。

「ほな俺あっち行くわ」

白石くんが爽やかに笑って私の隣から去る。座り、と謙也くんに言われて私は戸惑いながらも元の場所におさまった。
五年前と違って机のような境界はない。
腕が触れるほどの距離と、以前よりも格段に男らしくかっこよくなっている彼の側にいることに心臓が早鐘を打つ。

「久しぶり、やな」
「おん…」
「な、なんや綺麗になっててびっくりしたわ」
「えっ」
「あっ!あ、いや変な意味やなくてなっ!?」
「お、おん」

ぎこちない会話を交わす私達の隣からぷっと吹き出すような声が聞こえて二人揃ってそっちを見る。
するといつ戻ってきたのか白石くんがビールを飲んでいた。

「謙也…お前なぁ」
「あああああ白石!自分余計なこと言うんやないで!」
「いーや言わせてもらうで!謙也自分いつまでのろのろしとるつもりやねん」
「白石!黙り!」
「片想い歴また更新する気「あーっ!ああーっ!」
「…え?」

頭を抱える謙也くんとニヤニヤ笑う白石くんに挟まれて私はぽかんとしていた。
謙也くんと白石くんを交互に見ると白石くんが顔を寄せてきた。

「月城さん、謙也な」
「あかん!白石それ以上は!」
「五年前から月城さんに片想いしてんねん」
「…へ?」

言ったもん勝ちや、とニヤニヤする白石くんにおろおろと赤い顔を押さえる謙也くん。そんな様子を楽しむように白石くんは笑いながら立ち上がった。

「謙也、そろそろ片想い卒業しいや」

カラカラと笑いながら白石くんはどこかへ言ってしまう。私達は赤い顔で二人残されてしまった。

「月城さん」

テーブルの上に載せていた手をぎゅっと掴まれる。何か見えない力に促されるように彼の顔を見れば彼は真っ赤な、でも真剣な顔でこっちを見ていた。

「俺、中学の頃からずっと月城さんのことが好きや。めっちゃ好きや!」
「あ…」

彼の真っ直ぐな告白に私は目をしばたたかせて口元に握られていない方の手を当てた。真っ直ぐ過ぎる視線に射抜かれそうな気がして反射的に目を逸らした。

「月城、さんは、」

俺のことどう思っとるん…?と段々小さくなってくる声に私はごくりと唾を飲み込んだ。ここで言わなきゃきっと一生言えない。
目が見れなくて俯いて視線を自分の脚に向けながら、口を開いた。

「わ、私…」
「ん、」
「私、も…ずっと好き、やっ、た」

感情が高ぶり過ぎて涙が出そうになって慌てて顔を上げるとぱくぱくと口を開けたり閉じたりする謙也くんと目が合う。そして赤い顔を緩ませて笑うと彼の手は私の手を離れ背中に回った。

「ひゃ、」
「おっしゃあ!」

遠くから、おーカップル出来たで!って言う白石くんの声と、それに合わせて囃し立てるクラスメートの声が聞こえて私は顔が更に赤くなった気がした。


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