秋から突然イベントごとが増えてくる。
いや、正確には祭りや花火がたくさんある夏からではあるのだが、その波が過ぎた後の追い込みのような時期からを今回の話とする。
やたらと説明臭いものになってしまったが、ようはあまりにイベントが多すぎて疲労が蓄積してきているということだ。
屋上で煙草をふかしながら物思いにふけっているような学生の姿が見られる。
燃えるような赤の髪をヘアバンドで某聖職者漫画のJr.のようにまとめて、どこか軍人めいた学生とは思えない雰囲気をまとわせている。
彼はこの学校の一般生徒で最上級生、企画委員の委員長を務めている環薙考輝だ。
未成年は喫煙禁止だとか、なぜそんな異世界の人間のような髪色なのだとか、つっこみたいところはいろいろとあげられるであろう。しかし今はそんなことは対して問題ではない。
彼は困っていた。イベントの多いこの時期に、何をどこまで許容し企画するか。
「ふ、ぅ」
煙草の煙を肺に入れてその独特の香りを楽しみながらため息をこぼす。
頭の中に思い浮かぶのは10月の末に行ったハロウィンの企画だった。
仮装とお菓子の持ち込みが許可されるという利点だけを考えて1年生がごり押ししてきたその日は、体に異変が起こるという謎の菓子(確実に元凶は紫蔵だ)と通常授業も行われるというのに本気で仮装に取り組んだ生徒たちによるシュールな授業風景でなかなかにカオスな状態となってしまった。収拾がつかなくなるだろうということは予想できてはいたのだが、少々予想の範疇を超えていた。、鷹史や黒丑の協力がなければどうなっていたことやら。
頭が痛いと常々言っている如月の気持ちがよくわかる一日だったと思う。
それにしても、なんでこうも馬鹿みたいなことを全力でやるのだろうウチの生徒は。企画する側からすれば楽しんでくれていることにかなり嬉しさは感じるのだが、校外の評判はあまりよろしくないらしい。
以前時月にそういう話を聞いたが「奇人変人の集まり」だとか「不良のたまり場」とか「入学するとどんなまともな奴でもおかいくなる」なんて都市伝説のようなものまであった気がする。いったいなんだと思ってるんだ。確かにまともな人間など見たことがないがな。
それたな。
そういえば、11月11日は世間ではポッキー&プリッツの日だったらしい。俺はそれを知らなかったし暫く集会がなかったからなにもイベントを企画していなかったが。
あの日は今まで話したことのない人間からもやたらとプリッツをもらったが、そういうことだったんだな。棒状の菓子(チョコつきが重要か?)ならそこにトッポも入れてやってほしい所だ。ちなみに俺はトッポ派だ。最後までチョコたっぷり、いいじゃないか。
リア充の連中はこの日に喜々としてポッキーゲームを行うというのも後々聞いたのだが、校内でそんなことをしているようすはなかった。まるで調査兵団のような体制でポッキーをぶん投げたりはしていたようだが。あれはいただけないな。もったいない。
そういえば鷹史だけはトッポを持っていたな。何かを言おうとしている時に被せるように「くれ」といってしまったが……後で聞いてみるか。
「さ、て……どうしたものか」
次にあるのは何だ?まだ一つ大きな祭りがあったが……まあそれは学校単位で考えることではないだろう。となると次はクリスマスか。少し間があるな。休めるといいのだが。
「クリスマスなら装飾と、ツリーと、プレゼント交換は王道か?あとは調理部に頼んで食事を用意してもらうか……紅樹が大変そうだが、まあ仕方ないだろう」
手にしていたメモ帳にカリカリと記入していき、端の方に“紫蔵注意”と書き加える。ハロウィンの二の舞はごめんだ。
次々と書き加えていく中でふと鷹史の顔が浮かんで手を止めた。
あいつはプレゼントなど欲しがる口だろうか?あげるなら何がいい?何が一番喜ぶだろうか。
「イベントよりも、そっちが重要かもしれんな」
今まで考えたこともなかった愛しい者への贈り物。ふと思い浮かんだが最後気になってほかのことなど考えられなくなった。
どうせこのまま煙草を手にしていたら彼は来るのだろうから、そのときにでも聞いてみようか。
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話が迷走してきたので中途半端なまま終了!
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