「おはよー、紫蔵」
「おはよぉさん」
「おはよう、紫蔵君!」
「お、おん。おはようさん」
教室に入ると次々にクラスメイト達が声をかけてくれる。
みんなフレンドリーやなぁ、なんて思ったが、そういえばこれの発祥は自分なんだと思い出す。
そういや初めの頃は俺しか挨拶してへんかったもんなぁ。今思えば懐かしい。
「おっはよー!しーちゃんっ」
「だっれがしーちゃんやねん!!キモイわ!」
「あははっ、ジョークだって」
軽口を叩く友人、堀口。今、堀口?誰やって思った人、詳しい説明したらんから感覚で掴んでや!!
あれや、所詮モブや。
「おいあずさぁ。今なんか失礼なこと考えなかったー?」
「そないなことないで…って、目ぇ怖い!笑ってへんの怖い!!」
「アハハハハハハ」
「いややー!怖いー!」
なんやコイツ、勘鋭っ!ちゅーか、なんやねんこのコント。めっちゃ楽しいwww
「そういやさぁ、なんか今日のお前ものたんないんだけど」
「はぁ?失礼なやっちゃなぁ。急に何やねん」
「いや、マジ。何かたんない気がする」
「ちょぉ、ジロジロみんとって。お兄ちゃんハズイっっ」
「うっわwwwwないわーwww」
腹を抱えて爆笑しだす堀口。そないに笑わんでもええやん。
あーアカン!なんや恥ずかしゅーなってきた……
「梓、真っ赤wwwww」
「うっさいわ!」
視線を背けて後ろを向く。途端に笑いが止まる堀口。なんやねん、急に。逆に気になるわ!
「なんなん、自分」
「……あー、理由分かった……」
「はぁ?」
「お前、しっぽどこやったよ」
「尻尾?…………あー、な」
自分のうなじを触る。そこには昨日まであったはずの髪の束がなかった。
ものたりんってそれかいな。確かに今まであったもんが無いんは違和感あるけど……
「で、どーしたよ」
「オネーサマに引っ張られた挙げ句切られた。見てみぃ、切るときの弾みに皮膚もかすってん」
「うっわぁwwwwざまぁwwww」
「なんっでやねん!」
「姉ちゃん美人なんだろー?羨ましいんだよ!」
「男の嫉妬は醜いでwww」
「うっせぇ!」
笑いながら椅子を立ち、教室を駆け回る。首を風が撫でていってくすぐったい。
クラスメイトが俺達の話を聞いて同意の表情を浮かべているのは髪の方やと思う。
姉の方やないやろ!!?
あの髪(堀口曰く尻尾)も俺の大事な一部なんだなってちょっと思った朝の出来事だった。
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