「あぁ、丁度ええところで会ったわ」
「ぇ…?俺?」
「おん。えーと……五為理苑クンでええねんな?」
「…はい」
「自分、俺と付き合わへん?」
「ぇ…ぇええ!??」
ハートに火をつけて
突然の告白で、俺と先輩は出会った。
なんで先輩か分かったかって、そりゃ、ネクタイの色。学年ごとに違うからさ。
んで、初対面で突然の告白。しかも男から…なんて経験あるわけもなく。
ただからかわれていると思った。ていうか、そう思うのが普通だろ?
ぁ、ちなみにここ、移動教室中の廊下な。
わかる?人が結構いる中でこれだぜ?普通にさ、怒っていいと思うんだ。
「ちょ、何なんですか急に!」
「こういうもんは急にあるもんやろ?」
「そうじゃなくて!俺、初対m」
「ぁ、俺の名前は紫蔵梓いうねん。覚えてな」
「ちょっと、人の話聞いてくださいよ!!」
ニコニコと微笑みながら話すこの先輩は、紫蔵梓と言うらしい。
なんか、どっかで聞いたことのある名前だけど……あー…思い出せない。
「ほな、返事考えとってな〜」
「ぇえ!!?」
「またなぁ〜」
一度俺の頭を撫でるとすれ違うようにして先輩はどこかへと去っていった。
なんなんだあの人。スッゲーマイペース……あー視線が痛い…
――――――
―――
―
「いなりぃ、告白されたんだって〜?」
「返事考えたのかよww?」
「あんなのからかわれただけだって…」
「男からだっけ?wwwww」
「案外本気かもよ?w」
「あーもぉうっせ!!」
「あ゛?」
「ぁ、いえ…」
「そういやこの間のさー」
「ぇ、スルー!!?」
悪かったと罪悪感なんて抱くほうがおかしいのだろうか…まぁ、いつものことなんだけど…
先輩に最初に告白されてそろそろ一週間が過ぎようとしている。
その間にも会うたびに「考えてくれた?」とか「自分のこと好きやで」とか…色々言われた。
なんか、あの先輩の言葉はやけに耳に残るんだよなぁ。
あの口調とかイントネーションのせいだろうか。関西弁?だっけ…
「おい、いなり!!!!」
「…ぇ?」
気づいたら俺の顔面向かって筆箱(布製)が飛んでくる。
ちょっと待って!どうしてこうなった!?
先輩のことグルグル考えててそれで…ぇ!?
あたる直前で視界の端に筆箱を構えてる奴がいた。
あいつら筆箱投げ合ってたのか…くそう、飛び火とかないわぁ……
「い゛っ!!ぅぁあ!!?ッ!ったー……」
「どんだけだよww」
「ちょ、大丈夫かwww」
顔面に筆箱がぶち当たった後、バランス崩して椅子から落ち、さらに窓枠で頭ぶつけて床に激突。
うぅ…なんでこんな目に…
「おい、誰か保健室運んでやれよw」
「誰かデケーのw」
「今の時間なら科学部の部長がいいんじゃね?w」
「あそっか、放課後いつもいるもんなww」
科学準備室はここから結構近い。
んで、同学年が運ぶより先輩が運んだほうがいいって考えた……いや、楽しんでるだけみたい…
「連れてきたぜ」
クラスメイトの声がして入り口のほうを見た。そして、思わず固まった。
そこにいたのは見覚えのある…いや、むしろあり過ぎる先輩だったのだ。
「怪我人って誰や?」
この口調、容姿。間違いない。俺の悩みの種である紫蔵梓先輩その人だ。
ぜってー知っててやってるだろぉ!!
「コイツっす」
「よろしくお願いしまぁす!」
「おん」
「ちょっと…なんでこの人なんだよ!」
「はいはい、暴れんの。おとなしゅうしとき」
「態々来てくれたんだから反抗すんなよw」
「あ、後で覚えとけよ!!」
なんか雑魚い敵キャラみたいな台詞を残して、俺は保健室へと連行された。
その間、知り合いに会うのが嫌で先輩に巻きついて顔を隠していた。
だってさ…こんなんぜってーからかわれるじゃん!特に時月とかさ!!
「キツない?大丈夫か?」
「?ぁ、はい」
「よかったわ。もう少しでつくさかい、気ぃ抜かんでな」
「へ?」
いつも俺のことなんか気にしないで自分勝手なくせに、優しく気遣ってくれる。
見かけも口調もおんなじだけど、なんか別人みたいな気がした。てか、うん。なんからしくない。
それにしても、気を抜くなってなんだ?んなの意識できるわけ。
「油断しとったら空き教室に連れ込むで」
顔だけこちらに軽く向けて笑った。前言撤回!この人やっぱ変わんない!
そうこうしているうちに保健室に到着。
紫蔵先輩が慣れた雰囲気でゆっくりと俺を椅子に下ろして棚から治療道具を持ってきた。
「手馴れてるんすね」
「保険委員長やさかい、当然ちゃう?」
「…え?」
「ん?なした?」
ようやく思い出した。そうだ、この人毎学期保健委員のお知らせとかで集会のときに前で話してんじゃん。それに科学部部長って、確か……変人で有名?だっけ…
うわぁ…俺すごい人に告白されてたんだ…
あー…つーことは…
「先輩、告白のことなんすけど……」
「ぉ、よぉやっと答え決めてくれたん?」
「や、本気だったんすね」
「そこからかいな。初めっから大マジやで?」
苦笑しながらも治療の手をやめない紫蔵先輩。
「急すぎて、しかも男なのに信じられるわけないっす」
「せやねぇ…じゃぁ、これから少しずつ考えてくれへんかな?」
「…まあ、少しなら」
「おおきに。とりあえず、梓先輩ってとこからお願いしよかな」
試しにあずさ先輩と呼んで見ると、嬉しそうに微笑んだ。
なんだろう、今まで俺が持っていたイメージがちょっとずつ変化してく気がする。
まァ、変な人って事は変わんないんだけどさ。
「さぁて……もぉ気、抜いてもぇぇで」
「ぅぁっ!?…ッて〜〜〜!」
首筋をなぞられて思わず張っていた気が抜けた。途端に走る痛み。
今まで別のことに意識向けて気を張っていたから痛みを忘れてたんだ。
やっべ…一回思い出すとスッゴイ痛いんですけどッッ
「今まで気ぃ張っとって良かったやろ?治療中にこれやったら自分泣いとるで」
「〜〜〜〜っ、どもーッ」
「いえいえw……あーぁ、涙目やん」
涙を拭われる。俺よりも少し骨張った傷だらけの手。
これ、部活中の傷なんだろうか…いや、科学部って別に怪我しねーよな…
「ほな、これで終いや。怪我の具合心配やさかい、送ってったるわ」
「…ぃや、逆に危険な気がするんで遠慮します」
「安心せぇ。嫌われるようなこと絶対せん」
「ホントですか」
「おん。信じてぇな」
信頼できる人かと聞かれたら、けしてイエスとは言えないけど…別に今日ぐらいは良いんじゃないかって思ってしまった。先輩、以外に優しいし。俺のこと考えてくれるし。
「じゃぁ、お願いします」
「おおきに」
ここは普通、俺が感謝するべきなのに。嬉しそうにあずさ先輩は笑った。
俺の荷物も持ってくれて、態々俺に合わせてゆっくりのペースで歩いてくれる。
何時も歩いてるとき、もっと速いのに。
………あれ……結構、良い人……?
「なした?」
「…へ?」
「ボーッとしとったやろ?」
「ぁ…あー…なんでもないです」
「さよか?」
「はい…あ、ここっす」
危うく通り過ぎるところだった…
「無事にたどり着いて良かったわぁ。ほな、お大事にな」
「送ってくれてありがとうございました!」
「御礼なんいらへんよ」
「でも…」
「……俺、これでええもん」
視界が突然何かに遮られる。温かい。感触的に、コレはあずさ先輩の手。
そんな風に考えている間に、唇に軽く何かが当たる感覚がして………
って、ぇええええ!!?
「え…先輩、今……ぇ、え!?」
「ははっ!ほなね、いつクン」
「……っっせ、んぱいの馬鹿ぁぁああ!!」
叫び声が聞こえたのか、楽しそうにしながら手をひらひらとふる。
やっぱりマイペースな人だ。いい意味でも、悪い意味でもな!
「……っぁあ!」
何か、俺変だ。あんな変な先輩に、しかも男に、キスされたかもしれないって言うのに…顔が熱い。
鼓動が速い。ドキドキする。
変だ…だって……あんな人を好きになったみたいに……こんな…
って、何乙女みたいな事思っちゃってんの俺!?
無いから!ぜったい絶対ありえないから!!
「やっぱ、意識すんの止めよ…」
んなことしたら、マジに惚れちゃいそうで、ちょっと怖い。
変なのに、優しいあの先輩のことが…
恋心(ハート)に火をつけて
(答え、もう決まっとるはずやで?)
――――
二人のイメージ曲って「メランコリック」かなぁって思ってww
五為クンの口調が分からん上に、書く途中で時間開けたから後半支離滅裂orz
このカップルには幸せになって欲しいなぁwww
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