不良の定義といえばなんだろう。
授業をサボること?
風紀を乱すこと?
喧嘩に明け暮れること?
上げれば数え切れないぐらいあるのだろう。
基準なんて人それぞれだしな。
で、だ。
何故突然そんな事を思ったのかというと、その中でも典型的な不良に絡まれたからである。
いまどきありえないぐらいダサイ髪型に、服装に、目つき。
ダサい目つきというのはおかしいか?まぁ、気にするな。
「兄ちゃんガンつけてんじゃねぇぞ」
「喧嘩売ってんのか?あぁ?」
「もう滅びたと思ってたんだが…こういう馬鹿」
「誰が馬鹿だとぉ!?」
「一体いつの時代の不良だ、貴様ら」
さすがに希少だろう、こんな奴ら。
呆れたようにため息をつくと、不良共が苛立った様子で睨んできた。
「てめぇ、調子乗ってんじゃねぇよ」
その言葉が発されると同時に眼前に拳が迫る。
ピタ・・・と効果音でも付いているかのように、寸前の所で止まった。
ニヤニヤと笑う不良共が果てしなくイラつくと言っても、誰も俺を咎めないだろう。
「ビビッてんじゃねぇの?」
「………喧嘩はするなと黒丑から言われたんだが…しょうがないな」
「あぁ?」
「そんなに構って欲しいならかかって来い、餓鬼共」
この後ボロ勝ちしたのは言うまでもないな。
―――――
「こんにちは」
「あぁ、犬か」
「喧嘩してきたんですか…?」
「餓鬼をからかって来ただけだ」
裏門をくぐって屋上へと直行すると先客がいた。犬…鷹史だ。
「…呼んでくださったらよかったのに」
「態々呼ぶほどでもないかと思ってな」
「……俺も、やりたかったです」
シュンと子犬が項垂れるような仕草をする。
此奴の特徴であるシッポのアクセが今日は犬であるからちょうどいいな。
ふ、と軽く笑みを向けて頭を撫でてやる。
「また次の時にな」
割と物騒な会話であることは認識しつつも、鷹史のどこか嬉しそうな薄い笑みを見るとどうでもよくなる。
本当に、忠実な犬だ。
「さて……そろそろ校舎に戻るか」
ワシャッと少し雑ではあるが頭を撫でてやる。少し嫌そうなのは子ども扱いだと思ったからか?
それはそれであながち間違っていない気もするがな。
こいつは後輩だし、な?
「……あ」
小さく声を漏らした鷹史。
一変。
俺になついていたような雰囲気が消え、ピリピリと微弱の殺気が伝わってくる。
「先輩……?」
低くなった声。
酷く冷たくなった瞳が俺を写した。
まるで血に飢えた獣がようやく獲物も見つけたときのように。
ゾクっと…寒気が走り、感じるのは恐怖。
「…なんだ」
「それ…」
ゆっくりと降りた視線の先には……
「…煙草、か?」
「駄目です。肺炎になっちゃいますよ」
「たかが数h「先輩!」
普段とは違う雰囲気に、声量。
本当、とことん嫌いだな…これ。
だが、なにもそこまで態度を豹変させなくてもいいだろうに。
「没収しますよ。」
「………」
「しますからね」
「ああ…」
ため息をついて渡すと、同時にライターまで取り上げられた。
「敵わないな」
「……はい?」
小さく…笑って…
45:俺の負けだ
(喧嘩は別、だ)
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