今年もこの季節がやってきたか…
ガタリと音をたて教卓の前に立ち止まると、自然とクラス内は静寂に包まれる。
俺は教卓の前でそれを見届け
「紳士淑女の諸君、今年も運動会の季節がやってきたわけだが…」
毎年の恒例行事。
手元の資料を読み上げるが…
あぁ…嫌になる……
「もう知っているだろうが、競技は去年と変更はない。と、言いたいところだが……」
「はぁい、今年は新しい競技が増えるんだよねぇ〜」
「神宮寺…まだ話しの途中だ。」
「えぇ〜ソーマくんのいけずぅ」
「黙れ。」
「はぁーいおとーさぁん」
途中、神宮寺に割り込まれ…
ただでさえ面倒くさい奴がさらに面倒くさくなる季節。
神宮寺に至っては、年中無休で面倒くさいのだが。
「…神宮寺が先ほど言った通り、今年は新しい種目が追加された」
「マジ?」
「えー…なんだろうねー?」
「はぁー…ダルい」
ダルいのは俺も同じだ。
「新しい種目は…」
――――――……
「あっはっはっはっはっ!!!」
あぁ…だから嫌だったんだ…
「障害物と借り物は…っ!」
まさかこんなトラップがあるとは思わないだろう!!
「誰だ!ポカリの中に大量の塩を入れたのは!?」
おかげで醜態を晒すはめになったではないか…っ!
「あっはっはっ!アハッ…ブフォッあひゃひゃひゃひゃ!!」
「ッ…貴様は、いい加減に、黙れっ!!」
「びゃべぁっ!」
隣で顔をポカリまみれにして大笑いしている神宮寺にアッパーをかまし、
さらにトラップの一つであろうパン粉を顔面といわず、頭からぶちまける。
ちなみに小麦粉は面白味に欠けると言われ、早乙女によって片栗粉に替えられている。
おかげで前走者の霧端含め、数人はドロドロだ。
やけに水系トラップが多いと思ったら…
「…せめてもっと粘り気がないものにして欲しかったんだがな…」
あれでは後で洗い流すのは大変だろうな…
「いやいや、そもそもパン粉や片栗粉が頭上から水と共に降ってくるのが異常だからねぇー?」
「…よく似合ってるぞ。そのパン粉」
「嬉しくネーヨ」
パン粉まみれの神宮寺を一瞥し、
次のトラップである借り物の札を引きに走る。
「……ふむ、」
これは…なかなか……
「どうしたのかな…」
「借り物なんだったのかな」
札を見たまま動かなくなった俺をみて
俺がなんの借り物を引いたのか気になったのだろう。
ちらほらと憶測が飛び交う。
ふむ…腹をくくるか
「早乙女。俺に借りられる気はないか?」
一年のテント席に走りより、借り物の札を見せる。
「俺?」
隣の紅樹から殺気を感じるが、まぁいつものことだ。
霧端に向けられる殺気よりはマシだと思うことにしよう。
「あぁ。このお題はお前以外居ない気がしてな…」
「ふぅん……いいよ。パパの頼みだもんね」
ニッコリと笑う早乙女は女子も見惚れるほど愛らしい。
早乙女の笑顔に当てられたのか、数人の男子生徒が顔を赤く染めている。
後で紅樹に絞められるだろうな…
男子生徒を哀れみながら靴紐を結い直している早乙女に
まだ本性をみせてないのかと問うと、意味深な返答が返ってきた。
「そんなことより、早く行こうよ。俺を借りるからには一位を取ってもらわないと」
「…そうだな」
手を繋ぎ、はたからみたらさながら父と子の図だろうか。
そんなことを思いながらゴールへ向かって小走りで走る。
かなり遅れてゴールしたと思った俺は、一位の旗を渡されたことに少し驚いた。
「かなり遅れたと思ったんだが…なんだ?借り物に苦戦でもしてるのか…?」
何気なく早乙女に問いかけたが、早乙女に聞く俺が間違っていたようだ。
「借り物札用意したの、俺の下僕だから。」
早乙女…お前は将来なにになりたいんだ……
24:絶対勝利
(少々チートすぎると思うんだが…)
(提案してきたのは下僕の野郎でーす。俺悪くないもーんっ)
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