「紘君っていっつも微笑んでて優しそうだよね」
「私話したことあるけど、すっごく紳士的だったよ!」
女子たちの話し声が聞こえてくれる。
彼女たちの視線の先には、中庭にいる時月紘。
やわらかい微笑を受けながら、しかしどこか子供っぽい仕草で他の男子生徒と話していた。
「ねぇ!こっち向いた!」
「今絶対目ぇあったよね!」
キャッキャととても楽しそうにミーハーな彼女たちは盛り上がっていた。
俺はそれに違和感以外の何も感じないんだが……
彼女たちには見えないのだろうか。
一緒に話している男子が時々まるで“死の宣告”でも言い渡されたような顔をしている。
それに、俺から見たあの表情は、人をいたぶって楽しんでいるような気がするんだが?
「 げ 」
目が合った。
あってしまった。
やっばい、なんか笑顔が超絶黒いんですけど。
なんだ、思考でも読まれたのか!?
お前は超能力者か!!?
ひらひらと手を振ってみせる。笑顔、引きつるんだけど……
「ぇ?なに、聞こえない」
彼の口が動いている。
俺に向けてだよな?違ったらハz
“よ け い な こ と い う な よ”
一気に寒気が襲ってきたのはきっと言わなくても予想がつくであろう。
先ほどの引きつった笑顔のまま硬直して、背筋を冷や汗が流れる。
何、このホラー。
まだ、春ですよ…?涼しくなんてならなくていいよ!
「お、おぅ」
ようやく口から出たのはそれだけだった。
とうの彼は満足したように、真っ青になった男子を連れて校舎の中に消えていった。
俺の気も知らないで……
「やっぱかっこよかったねぇ!!」
「ホントv」
声を大にしていいたい。
貴方達は騙されてますよ!あの笑顔に騙されてますよ!!って……
いや、知らぬが仏、か…?
笑顔の裏には
(なんで、逆らえないんだろう…)
――――
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