必要ないでしょ?
「佐久間が俺のものって証明が欲しい」
源田と付き合いはじめて1ヶ月経った頃だった。
今までそんな風に言われたこと無かったし、源田はそういうことを考えないと思っていた。
源田は、鈍感で天然で独占欲などないものだと考えた自分の勝手な解釈からだったが。
「何だよ、突然」
「佐久間は優しいから誰にだって笑いかける。恋人なのに恋人じゃないような感覚になる」
「可愛い後輩や鬼道さんに笑いかけるなと?」
「そんなことは言ってない。ただ欲しいんだ、俺と佐久間を繋ぐ証拠が」
「ヤりたいのか?」
「そんなことしたって証拠にはならない」
「キスマークとかでもつければ?」
「消えてしまう」
流石に苛々してきた。
言いたいことがあるならハッキリと言ってくれれば良いのにこいつは言わない。
そんなに口にしにくいなら最初から言わなけりゃ良かったじゃないか。
じとっと睨み付けても源田は口をモゴモゴとさせた。
「ハッキリ言えよ」
「でも、」
「いいから!」
しびれを切らし声をあらあげると源田は覚悟したのか一度深呼吸をした。
漸く言う気になったか。
「…佐久間の体の一部が欲しい」
何処の火の悪魔だ、と突っ込んでやりたかった。
でも源田の顔はマジで。
「髪は駄目だ、気に入ってるから。手は駄目だ、抱き締めてくれなくなるから。足は駄目だ、サッカー出来なくなるから」
なんだ、どこをあげるかは源田が決めるんじゃないか。
一瞬考えた自分が恥ずかしい。
「佐久間って右を攻めるFWだよな」
「だからどうした」
「じゃあ右目は要らないじゃないか」
必要ないでしょ?
声に出さなかったが源田は確かにそう言った。
「必要ないな」
「だろ?だからさ」
俺に頂戴?
「あれ、佐久間先輩?その眼帯どうしたんですか?」
「ん?愛の証拠だよ」
「うわ、甘」
End.
初っぱなからエグい。
でもあまりエグくないかも。
読む人によって変わるよね。
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