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「赤井さんさぁ、今のままでいいの?」
「何のことだ」
「ナマエお兄さんのこと」

ナマエさんと会った数日後、工藤邸に寄った俺は沖矢さん、基、赤井さんに切り出す。知り合ってまだ日は浅いけれど、放っておけるほどの仲では無い。会う度にいつもどこか上の空で、何処にいても泣き出してしまいそうで、目を離した隙に消えてしまいそうで。

「会いたがってるよ」
「知ってるさ。だが、今は時期じゃない」

じゃあその時期はいつなんだという話だ。
あんなに弱々しく生きてる人なんてそうそう居ない。見ていてハラハラするからさっさと安心させてやればいいものを。

赤井さんに会いたいの?と聞いた時に、まさか俺がそんな事を聞いてくるとは思わなかったんだろう。いつもは伏し目がちな瞳が大きく見開かれて、そして寂しそうに微笑んだ。

「ナマエは俺が恋しいらしい」
「だろうね…」
「ナマエには悪いが、寂しがっている様子も可愛いもんだ」
「うわぁ、お兄さん可哀想」

どうやらこのFBIは若干今の状況を楽しんでいるらしい。可哀想にと、ナマエさんに思わず同情してしまう。

「ノートがな」
「ん?」
「ノートがあったんだ。近況やら俺への想いやらが書き込まれたノートが」
「へぇ」
「なんともまぁ愛らしい事をするもんだと」
「やっぱり完全に楽しんでるでしょ」
「まぁ、多少はな」
「お兄さん可哀想…」
「正直あのノートがどこまで進化するかが楽しみだというのも、なくはない」
「はは、いい趣味してるね…」

思わず乾いた笑いが出る。どんな事が書かれているかなんて詳しくは知らないが、赤井さんが愉しそうにしているあたり、赤井さんが言う「俺への想い」とやらは可愛らしい事が書いてあったんだろう。それでも面白がってしまっているのを見ると、ナマエさんが不憫だなぁなんて思ってしまう。
いっその事俺が教えてあげたいものだ。沖矢昴が実は赤井秀一なのだと。あの人は一体どんなリアクションをするのだろうか。ちょっとだけ見てみたい気もする。

「まぁとにかく、ほんとタイミング見てどうにかしてあげてよ。今のお兄さん、見てられないんだ」
「分かってるさ」

ほんとに分かっているのだろうか。ほとほと謎だが、まぁこの人の事だからどうせ全て上手く事を運ぶだろう。

「あ、そうそう。どうやら安室さんがお兄さんの事気にしてるっぽいよ」

そう告げると、普段ポーカーフェイスな赤井さんの眉毛がピクリと動いたのが見えた。が、それは指摘せずに「じゃ、僕はそろそほ帰るね!」なんて別れの挨拶を述べて工藤邸を後にする。
赤井さんにしろナマエさんにしろ、色々と頑張ってほしいものだ。