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目が覚めると知らない部屋に居た。
僅かに隙間が開いているカーテンから見える外はまだ薄暗い。
何故僕は知らない部屋に居るのか、その答えには、隣に感じる温もりにより辿り着いた。

隣で眠っているシュウに気付いてちょっとびっくりしたけれど、そうだ。思い出した。
昨夜この家に呼び出された僕はスバル──もといシュウに衝撃の告白をされていたのだった。

ようやく、会えた。

ずっとずっと、願っていた事だった。
もう一度会いたい。もう一度名前を呼んでほしい。声が聞きたい。何度同じ事を願っていただろう。それが漸く叶った。
昨夜も散々泣いたはずなのに、また涙が溢れてくる。
僕ってこんなに泣き虫だったっけ。

「ん……。…起きてたのか、ナマエ」
「シュウ…」

まだ夜も更けていないのに、起こしてしまった。

「泣いてるのか」
「泣いてない」
「その割には鼻声だが」
「泣いてないもん」
「そうか。……まだ早い。おいで、もう少し寝よう」
「……うん」

携帯のディスプレイを確認したシュウが少し笑って僕を抱き寄せた。そのままシュウの胸に顔を埋めて、僕は二度目の眠りにつく。


△▼△▼△▼△


二度目に目が覚めた時、隣にシュウは居なくて、やっぱり夢だったのかと怖くなって急いでベッドから抜け出して寝室を出た。リビングの場所だけは分かるから真っ先にリビングへと向かうと、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいるシュウがそこには居た。

「起きたか」

夢じゃ、なかった。良かった。

「おい、何故また泣くんだ」
「だって、起きたらシュウ、居ないから、また夢だったのかって……」
「それはすまない。もう大丈夫だと思ったんだがな」

シュウに抱き着いてその温もりを確かめる。あたたかい。本物のシュウだ。

「シュウの匂い」
「ん?」
「落ち着く」
「ははっ」

シュウの肩口に顔を埋めてその温もりと匂いを感じていると、朝食にしようかと声を掛けられた。それに頷いて、抱き着いたままシュウと共にキッチンへ。
動きにくいと笑われたけど、離れたくなくて、少しでも一緒に居たくて腕に力を込める。それにまたシュウが喉の奥を鳴らして笑った。

トーストとベーコンエッグ、そしてコーヒーというありきたりなメニューだけれど、久しぶりにシュウが用意してくれたという事実だけで、それがとても特別なモノのように思えた。

どうせ味なんか分からないって思いつつ出されたものを口にすると、シュウが居るからなのか、久しぶりに味を感じた。
現金だとは思うけど、シュウの存在というものはやはり僕の中でとても大きいようだ。



「さて、そろそろ帰った方がいい。ジョディも心配するだろう」
「まだ一緒にいたい」
「ダメだ」
「やだ…」
「ナマエ、」
「……」

咎めるような声に口を噤む。
僕は一緒にいたいのに、シュウはそうじゃないの?そんな言葉が出てきそうになったけど、そんな事言ったら呆れられてしまう。

「ナマエ」

今度は少し柔らかい声で僕の名を呼ぶシュウ。

「……分かった……」
「ありがとう」
「また、会いに来ていいの…?」
「ああ」
「うん…」


「Love you now and forever」
帰り際、別れのキスの合間に紡がれた言葉に思わず顔が赤くなった。
僕も、ずっとずっと愛してる。