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大事な話があるからと、工藤邸にナマエを呼び出した。
まだ時期では無いと思っていたが、話があると持ち掛けた日に久しぶりにナマエの姿を見れば、なんだかあの夜よりも憔悴しているように見えて、流石にあれはやり過ぎたかと反省した。
そんなナマエを見てしまったから、このまま引き延ばすのもマズイと思ったのだ。予定より早いが仕方ない。本当に死なれても困る。
ナマエを心配していたボウヤや、ずっとナマエを見守ってくれていたジェイムズにも念の為、正体を明かす旨を伝えておいた。まぁ大丈夫だろう。

沖矢昴のまま俺の話を持ち出せば、ナマエが動揺したのが分かる。
昔から感情を隠すのが下手なナマエは自分の感情にとても素直で、怒りたい時は思い切り怒り、泣きたい時は子供のように泣き、嫉妬だって隠さない。ジョディにすら嫉妬していた事もあるぐらいだ。

泣き出したナマエにこれ以上は限界だろうと判断した俺は腹を決める事にした。今から俺がする事をしっかり見ておけよ。
見せたいものがあるとナマエに告げ、意識を沖矢昴に向けさせ、マスクを脱ぐ。マスクを脱ぐ途中、その光景にびっくりしたのかナマエが小さな悲鳴を上げたのが聞こえた。
沖矢昴から元の俺、赤井秀一に戻ってみれば、ナマエは驚いたように目を見開いてフリーズしている。きっと頭の中では色々考えているんだろう。その様子が可愛らしくて思わず笑みが零れる。相変わらずわかり易い。

「おいで」

腕を広げてそう言えば、一瞬躊躇いを見せたものの、すぐさま飛び込んでくるナマエ。

「うぅっ……シュウ……ほんとに、ほんとにシュウ……? また、夢じゃ、ない…?」
「ああ」
「ひっく………いき、て……」
「黙っていてすまない」
「…ずっと…会い、たかった……! ぐすっ……」

大粒の涙を流しながら、ぺたぺたと確かめるかのように俺の顔を触るナマエ。その仕草はまるで小さな子供のようで。
思う存分顔を触って満足したのか、今度は胸に顔を埋めて泣き続ける。よくそんなに泣けるものだと感心すら覚える。そろそろ枯れてしまうのでは無いだろうか。ナマエの泣き顔も愛らしくて好きだから枯れてしまっては困るのだが。

ナマエの頭を撫でながら暫くそのままの状態で、ナマエが落ち着くのを待つ。
やがて鼻を啜る音だけが聞こえてきたあたりで名前を呼べば、泣き腫らした瞳が俺を捉える。

「な、に…?」
「この事は秘密で頼む」
「この事…?」
「沖矢昴が俺で、俺が沖矢昴であるという事。少々めんどくさくてな」
「……? それは、シュウの仕事に関係あるの…?」
「ああ」
「……わかった……」
「助かる」
「帰ってくる…?」
「ん?」
「家に、帰ってくる……?」
「すまないが、今はまだ帰れない。だが、俺は此処に居る」
「…………」
「会いたくなったらいつでも来い」
「…………うん…」

ナマエは寂しがり屋だし、すぐに嫉妬はするが、物分りは割と良い方だとは思う。仕事の事も気になってはいるのだろうが、詳しくは聞いてこない。そういうところにつけ込んでいる節はあるかもしれない。都合が良いと言ったら聞こえは悪いが、ナマエと居るのは楽で気分が良い。

「シュウ………」
「なんだ?」
「キスしていい…?」
「どうしようかな」
「………」
「冗談だ」

いつもなら、キスして!って俺にねだるくせに、自分からしていいかと確認してくるなんて、珍しい事もあるもんだ。それが可愛くて少し意地悪してやれば、あからさまに落ち込んだように顔を伏せるナマエ。今の精神状態のナマエで遊ぶのは流石にまずかったか。冗談だと言ってやればバッと顔を上げる。わかり易い。
どこまで頑張れるかと思ったが、控えめな触れるだけのキス。それがじれったくてナマエの唇を舐め口を開けさせ、中へ舌を侵入させる。

「ふっ……んん…っ」

舌と舌を絡め合い貪るように深く深くキスをしてやれば、時折ナマエの苦しそうな息遣いが漏れ出す。
離れていた時間を埋めるように、何度も何度もキスを交わす。暫くして顔を離すと涙のせいか、将又キスのせいか。空を想わせるような澄んだ蒼い潤んだ瞳が俺を見上げる。


やがてナマエは、泣き疲れたのか、ソファーに横になり俺の膝を枕にしたまま腹のところに顔を埋めて穏やかな寝息を立て始めた。

「赤井さん」
「ボウヤか」
「ナマエさん、大丈夫?」

どうやら様子を見に来たらしい。見ての通りだと、眠っているナマエに視線をやり答える。

「今日は此処で寝かせておくさ」
「うん。大丈夫そうなら良かった」
「ボウヤ、」
「何?」
「ナマエを心配してくれてありがとな」
「べっつに〜? どっかの誰かさんが様子を見れないって言うから仕方なくね〜?」

じゃあもう大丈夫だね。お兄さんの様子見に来ただけだから僕もう帰るよ。そう言ってボウヤはさっさと帰っていった。今度改めて礼をさせてもらおう。

玄関が閉まる音を聞き届け、俺はナマエを起こさないようそっとナマエの頭が乗ってる脚を抜かし、ナマエを抱き上げ寝室へと移動する。


「んん……、シュウ………」

起こしてしまったのかと思ったが、どうやら寝言のようで、規則正しい寝息が途切れる事が無い。

これで良かったのか。一抹の不安はまだ残るものの、ナマエの様子を見ればそんな不安も鳴りを潜める。
取り敢えず今はこれで良い。ナマエを危険に晒させはしない。

「Night my dear」

今は健やかに眠れ。