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大怪我をして帰ってきた、高校の時の後輩で恋人である降谷にびっくりして、小さく悲鳴を上げた。
ついこないだもあちこち怪我をして帰ってきたというのに。懲りずにまた怪我を拵えてくるなんて。

「病院は?」
「これぐらい平気ですよ」

変にプライドが高くて、意地っ張りで、強がりで。だから平気だなんて言うけど、実際は平気じゃない事ぐらい分かっている。俺を心配させないように嘘をつくのだって、今に始まった事じゃない。
ほんとは病院に行ってきちんと治療を受けて欲しいけど、きっと彼は絶対に行かないだろう。

「仕方ないなぁ」
「なんです?」
「俺がやってあげる」

救急箱を取り出してソファーに座り、おいでと降谷を呼ぶ。
少し嫌そうな顔をするけど、渋々といった感じで、服を上だけ脱いで俺の隣に座る降谷。こういうところは割と素直だ。

「何をしたらこんなになるかなぁ」

思いのほか傷が深い気もするが、ほんとのほんとに大丈夫なのかこれは。

仕事の事は何ひとつ話してはくれないけど、公安というのはこんなにも危険な仕事なのだろうか。





「はい、出来たよ」

とりあえずと、包帯を巻き終わりそう告げれば、ありがとうございますとぶっきらぼうに呟く降谷。

「仕事なのは分かるけどさ」
「うん」
「あんまり無茶すんなよ」
「それは、あまり約束出来ませんね」
「言うと思った」

仕事に誇りを持っていて、国を守ろうと必死に働く降谷はとてもかっこよくて尊敬出来る。
けれどやっぱり、怪我はあまりしないで欲しい。
待ってる方は心配で仕方ないのだから。

「傷、結構深かったから治るまでは大人しくしてろよ」
「みょうじさんって結構世話焼きですよね」
「誰かさんのせいでな」

救急箱を元の場所に戻し終えると今度は降谷が自分の隣をポンポンと叩く。素直にそれに従えば、俺の膝に頭を乗せる降谷。

「疲れました」
「うん」
「暫くこのままいさせてください」
「うん」
「みょうじさんは、すぐに僕を甘やかそうとする」
「そりゃね」
「つい甘えてしまいそうになる」
「甘えりゃ良いじゃん」
「それは、」

それは出来ません。
それだけ言うと降谷はそれ以降何も言わず、俺から顔を逸らして膝枕したまま目を閉じる。
よっぽど疲れていたのか、やがて、静かで規則正しい寝息が微かに聞こえてきた。

嫌われていないとは思う。降谷の事だから愛想を尽かしたらキッパリ言ってくるだろう。
それでも、今みたいに距離を感じる事が稀にあるのだ。なんだかそれが少し寂しい。
俺が部外者だから。一般人だから。だから降谷は一線引いているのかもしれない。別に、全てを話してほしい訳じゃないが。それでもたまには、もう少し頼って欲しいとか思ってしまう。年下が年上に甘えたってバチは当たらないだろうに。
いつか降谷がきちんと甘えられるようになるのを、気長に待つしか無いみたいだ。いつになる事やら。



「はっ!? 俺いつまで膝枕してりゃ良いんだ……?」