『3…2、1…Happy-New-Year!!』

2015年1月1日0時0分。
年明け前に食べきれなかったそばをすすり、にぎやかなテレビ画面を見つめる。
一人きりの、年越し。
携帯を見れば、いくつもの通知がきていた。箸を置いて、携帯を手に取る。何人もの友人から「あけましておめでとう」と送られてきていて、なんだかとても暖かい気持ちになる。一通一通返していってもその気持ちは膨らむばかり。

…でも、

「やっぱり来てない、か」

全部返し終わっても、重要なあの人からは来ていない。


当たり前だ。だって彼は、まだ年を越していないんだから。


私の恋人である、山崎悠は今ロサンゼルスに留学している。大事な実験があって年末も帰って来れないそうだ。
ロサンゼルスと日本の時差は約17時間。今、向こうは朝の7時頃。悠も丁度起きたぐらいだろうか。それとも、実験で徹夜でもしているのだろうか。

「…仕方ないよね」

携帯を置いてそばを食べようと箸を持つ。
…その時、綺麗なピアノが部屋中に鳴り響いた。悠専用の着信音だ。急いで箸を置いて、携帯を手に持つ。日本用の携帯も持っている悠は、ロサンゼルスにいても連絡することは可能である。私は一息ついてから携帯を耳まで持っていった。

「…っもしもし!?」

「ん」

いつも通り、小さく返事をするくらいの悠。
研究で忙しい時はめったに電話してこないのに。

「どうかした?」

「…あけましておめでとう」

「へ?…あ、おめでとう」

平然とそう言う悠。でも、でもロサンゼルスはまだ31日の朝のはず。
低血圧な悠は、朝はあまり電話してこないし、そもそも向こうは2014年だ。

「まだ、年越してないよね?」

「やだなあ、俺日本人だし。体内時計はもう2015年ですー」

そう言う声も、口調も、間違いなく悠のもので。頭がついてこない。でも、嬉しいことには変わりはない。
ずっと、ずっと遠くにいる彼は、もうここのことなんて二の次くらいだろうと思っていた。すっかり、外国に染まっていると思っていた。
でもこうやって時差まで考えて電話してくれているんだ。頬が赤く色づいていくのが、自分でも分かった。

「今年も、どうぞよろしくお願いします」

「いえいえこちらこそ」

二人して改まって挨拶だなんて、ちょっと可笑しくて、つい笑ってしまう。
何気ないこの時間が、やっぱり大事で、大好きでたまらない。

「…今年は絶対日本に帰るから」

「うん」

もしそれができなくたって、どうでもいいんだ。
こうやって約束したことが、かけがえのない宝物になる。

今年も、こんな日が続けばいいな。
















はなれていても
(心の距離と個体の距離は違うから)
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