150組の純白のドレスを着た若々しい女性にタキシードを着た男性。
女性と女性の間に掲げられた紫の花が、白と黒を引き立てていた。

彼女達は選び抜かれたレベタント。
年に一度の大舞台で大役を任された若者達。
中にはテレビで見たことのある政治家の娘や、いかにも高級そうな宝石をちらつかせている御曹司、純粋に笑っているあどけなさの残る娘。
それが社会の裏表を表しているようで、口許が緩む。

お察しの通り、今は年に一度、オペラ座の舞踏会オーパンバル。
彼女達の踊りが終われば、周りの観客も踊り出す。

総勢6000名が踊るなか、私は踊る気にはなれなかった。
隅で赤ワインを飲む私に声を掛けるものなどいないだろうし、当たり前なのだけど。
私にとっては、会場に散らばる紫や赤の色が目に毒だ。

「…貴女は、踊らないんですか?」

後ろから聞こえた透き通った声。出会いの場としてここに来る者もいるくらいだ。きっと、新しい出会いに恵まれた男女。数分後にはあそこで、綺麗な笑顔で踊ることだろう。
しかし、私以外にも踊らない女が居ただなんて。
その時、肩にぽんと置かれた手に、私は振り返ざるを負えなかった。

「無視だなんて、ひどいじゃないですか。」

「…驚いた。私に声を掛けるだなんて」

どうやらさっきの声は私に掛けられた言葉らしい。
その人は身長のある、スラッとした男性だった。

「踊らないのかな、って思ったので」

「私はいいんですよ。貴方こそ踊らないんですか?」

私がそうそう言うと、その人は苦い顔をした。
彼は気づいていないが、人といないフリーの彼はチャンスを狙う女の注目の的。今すぐ飢えた女に喰われても仕方ないくらいなのに。

「…僕、あまり女性と話すのが得意じゃなくて。今日は友人に誘われたんですけど…だめですね」

「…じゃあ、何故私に声を?」

女性と話すのが苦手なら、私も同類のはず。
自分で言うのもなんだが、今日は露出の高い女性らしい格好をしているし、化粧だって人並みにしている。
女性に見えないわけがない。

「…貴女なら、話せそうだなって」

その人は膝まずいて私の片手を取った。女性慣れしていないだなんて嘘の様。
絵になるそれに、私は体温が上がるのが分かった。
さっきまでの憂鬱はどこに行ったんだか。私も女なんだなーと、再確認する。

「一緒に踊りませんか?」

「…喜んで」

名前も知らない彼の誘いを、私は承諾した。さっきまで踊りたくもないと思っていたのに、不思議なものだ。
正直、いつもの私なら断っていただろうし、むしろ普通に会話できているのが不思議なくらいだ。
立った彼に釣られ、私も椅子から立つ。

「行きましょう」

そう彼はふわりと微笑んだ。

私はこの時、妖艶で煌びやかな雰囲気に酔っていたのかもしれない。
それでも、素敵な出会いに恵まれたんだから、なんだかどうでもよくなってきてしまう。
たまには溺れることも必要でしょう?





しとどの心にオーパンバル
(魅惑の輝きに照らされて)
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