死神の鎌 今回も廻の不在と云う事だ。 オレ、武巳と想二の二人で語ろうか。 「あれは廻の見舞いから帰る途中の事だ。 ―――― 「廻が熱を出したか…」 オレは廻が熱を出したから、見舞いに行ったんだ。 相変わらず、無茶をするなと思った。 その帰り道に、想二が居た。 あ、無論だが呼び方を変えたんだよ。 「あ、武巳兄ちゃんだぁ〜」 目隠しをした空目の弟。 異界に神隠しされた子。 「どうしたんだ?」 「廻兄ちゃんの様子を聞かせて!」 「ああ、熱を出しただけだよ。安静にしていれば治るから」 オレは想二に笑い掛ける。 「良かったぁ〜」 想二は無邪気に喜んでいた。 と、その時──。 「ヴギャアァァァーッ!!」 何かの叫び声がした。 「異形、か…」 そう、呟くとオレの裾を掴まれた。 「武巳兄ちゃん…怖いよ…」 「大丈夫だから、オレに任せろ」 オレは想二の頭を撫でてから、何処からか大きい鎌を取り出した。 そして、振り回す。 ズバァと、切り裂く音がして異形は倒れた。 「どうして、異形が此処に居るんだ?」 何かに誘き出されるかのように、異形たちが現れた。 オレの側には、想二が居る。 なんとしてでも、想二だけは守ってやらないと。 空目たちに何か、言われてしまう。 「オ前、ナンで死神ノ鎌ヲ持っデい゛るノガ!」 異形の一匹が、そう聞いてくる。 「武巳兄ちゃん…死神の鎌は危ないんだよ!」 「大丈夫だから…。オレはこれに頼らないと皆を守れないんだ!!」 鎌を振り回して、異形たちを殺していく。 赤い返り血はオレを紅く染め上げ、鈍い月の光を跳ね返す。 使う度に命を削っていく死神の鎌。 「がはぁっ!!」 オレは血を吐き出した。 死神の鎌は、皆を守りたいオレの願いから、契約した危ないモノ。 「武巳兄ちゃん…どうして命を賭けるの?」 「オレは追憶しているだけなのは、嫌だったんだよ」 「そんなエゴ…武巳兄ちゃんが側に居てくれるだけでボクは嬉しいんだ〜。お兄ちゃんみたいに暖かいから」 想二は嬉しい言葉を言ってくれた。 「ありがとな。オレにもこんな可愛い弟が居てくれたら、良かったのにな」 オレは笑いながら、想二の頭を撫でた。 薄れていく意識の中、オレは最期の言葉を呟いた。 「想二、ありがとう。サヨウナラ…」 そして、オレはその場に倒れた。 ―――― 武巳兄ちゃんは、ボクの目の前で倒れた。 ──キエテシマッタ。 「武巳兄ちゃぁぁぁんっ!!ボクを残して逝かないでっ!!ボクに笑い掛けてよ…。お兄ちゃんみたいな暖かさで、側に居てよっ…」 想二の悲痛な叫びが木霊する。 ──彼はもう…イナイ。死神の鎌は誰にも平等に命を奪い去る。残される者の事も考えずに── ---------- *後書きと云う名の反省* 今回で13作目となりました。此処まで読んでいただき、ありがとうございます。今回はシリアスと切ないをテーマに書き上げました。 |