甲田4 | ナノ


いつもの忘れられた語り部≠フ廻です。

今回は明かりの消えたビルの話を語りましょうか。

羽間市の一角に放置された廃墟のビル。

最近まで、明かりが点いていた。

――――

「なぁ、廻…あのビルさ、最近まで明かり点いていたよな?」

「ええ、点いていたね、武巳」

僕たちは羽間市の一角にあるビルの前にいた。

このビルは、所有者の一人息子が飛び降り自殺してからは封鎖された。

しかし、封鎖されたはずのビルに明かりが点いていた。

まるで、人を呼び寄せる為に異界が仕掛けた罠。

「武巳、このビルは自殺の名所みたいだよ」

「廻、このビルに入る事は…出来るか?」

武巳はそう、聞いてきた。

「僕の後ろにいれば、大丈夫だよ」

「そうか…」

「このビルね、仲間を求めていますよ」

僕は、言う

「えっ?」

「自殺した人たちが、自殺仲間を欲しがっているらしいですね」

「廻、どうすればいいんだ?」

「大丈夫だよ、亜紀には後から言っておきますよ」

     ***

『廻、武巳…あんたたちであの廃墟のビルに行ってくんない?』

     ***

僕たちは、ビルの中に入る。

電気、水道、ガスは去年活動を終えた。

今は何もない。

ホームレスもいたが、最近になって自殺していた。

だから、ゴミがその辺に捨ててある。

「廻…おれさ、怖いよ…」

「大丈夫?僕が側にいるよ」

僕は存在感を薄めた。

一時的に、気付かれにくくしただけ。

いずれ、気付かれるけどね。

と、その時――。

何処からか、足音が聞こえた。

「か、かかか廻!あ、足音が…」

「大丈夫だから、僕が護ってあげるから」

その足音は、このビルの所有者の一人息子だった。

『仲間ハどコだ…殺しテやル』

異界に消えて、帰還した異能者

『廻ィィィィ!!仲間を返セぇェぇェ!!』

「……!?」

「拓哉君、物語から消しますよ?」

「何ダと!?ふザけルナぁァぁァ!!」

「か、廻…」

「武巳は後ろにいてね」

僕は武巳を後ろに隠して、言霊を紡ぐ。

「忘れられた語り部≠ェ語りましょう

異界のモノに変わり果てた話を

忘れられた語り部≠ヘ知りましょう

あなたの全てを」

周りの空気が冷たくなる。

「拓哉君、仲間たちと異界に送りますね」

僕は笑う

「あリがトう、廻」

そう言って、拓哉君と仲間たちは、僕が開いた異界に通ずる本に吸い込まれ消えた。

「武巳、大丈夫だよ」

「廻…あ、ありがとうな」

「いいんですよ、友達なんですから」

――――

どうでしたか?

忘れられた語り部≠ェ語る「明かりの消えたビル」は。

何かの理由で自殺してしまった拓哉君。

恨みも晴らせないままに。

さて、次回は何を語りましょうか?

お楽しみに。

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100824

……………………………
*後書きと云う名の反省*
参加してから、4作を執筆して提供しました
楽しかったですよ


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