いつもの忘れられた語り部≠フ廻です。
今回は明かりの消えたビルの話を語りましょうか。
羽間市の一角に放置された廃墟のビル。
最近まで、明かりが点いていた。
――――
「なぁ、廻…あのビルさ、最近まで明かり点いていたよな?」
「ええ、点いていたね、武巳」
僕たちは羽間市の一角にあるビルの前にいた。
このビルは、所有者の一人息子が飛び降り自殺してからは封鎖された。
しかし、封鎖されたはずのビルに明かりが点いていた。
まるで、人を呼び寄せる為に異界が仕掛けた罠。
「武巳、このビルは自殺の名所みたいだよ」
「廻、このビルに入る事は…出来るか?」
武巳はそう、聞いてきた。
「僕の後ろにいれば、大丈夫だよ」
「そうか…」
「このビルね、仲間を求めていますよ」
僕は、言う
「えっ?」
「自殺した人たちが、自殺仲間を欲しがっているらしいですね」
「廻、どうすればいいんだ?」
「大丈夫だよ、亜紀には後から言っておきますよ」
***
『廻、武巳…あんたたちであの廃墟のビルに行ってくんない?』
***
僕たちは、ビルの中に入る。
電気、水道、ガスは去年活動を終えた。
今は何もない。
ホームレスもいたが、最近になって自殺していた。
だから、ゴミがその辺に捨ててある。
「廻…おれさ、怖いよ…」
「大丈夫?僕が側にいるよ」
僕は存在感を薄めた。
一時的に、気付かれにくくしただけ。
いずれ、気付かれるけどね。
と、その時――。
何処からか、足音が聞こえた。
「か、かかか廻!あ、足音が…」
「大丈夫だから、僕が護ってあげるから」
その足音は、このビルの所有者の一人息子だった。
『仲間ハどコだ…殺しテやル』
異界に消えて、帰還した異能者
『廻ィィィィ!!仲間を返セぇェぇェ!!』
「……!?」
「拓哉君、物語から消しますよ?」
「何ダと!?ふザけルナぁァぁァ!!」
「か、廻…」
「武巳は後ろにいてね」
僕は武巳を後ろに隠して、言霊を紡ぐ。
「忘れられた語り部≠ェ語りましょう
異界のモノに変わり果てた話を
忘れられた語り部≠ヘ知りましょう
あなたの全てを」
周りの空気が冷たくなる。
「拓哉君、仲間たちと異界に送りますね」
僕は笑う
「あリがトう、廻」
そう言って、拓哉君と仲間たちは、僕が開いた異界に通ずる本に吸い込まれ消えた。
「武巳、大丈夫だよ」
「廻…あ、ありがとうな」
「いいんですよ、友達なんですから」
――――
どうでしたか?
忘れられた語り部≠ェ語る「明かりの消えたビル」は。
何かの理由で自殺してしまった拓哉君。
恨みも晴らせないままに。
さて、次回は何を語りましょうか?
お楽しみに。
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100824
……………………………
*後書きと云う名の反省*
参加してから、4作を執筆して提供しました
楽しかったですよ