すすり泣き
missing 百物語企画
こんにちはなの…、ボクね、武巳兄ちゃんが大好きなの。
でもね、武巳兄ちゃんは…もう、いないの…。
だからね、ボクの話を聞いてほしいの。
─☆─☆─☆─
武巳兄ちゃんが居なくなって、一週間が経ったんだよ。
ボクね、武巳兄ちゃんが死んだのが信じられないの。
今でも、帰ってくるような気がするんだ。
あの優しい笑顔が見られないのが…悲しいよ…。
「くすん…。武巳兄ちゃん…」
ボクは自然に目隠しの布を取る。
隠された目から、一筋の涙が流れた。
幼い見た目のまま、その子は泣き叫ぶ。
未だに現実が受け入れられないボクは武巳兄ちゃんを待つ。
いくつの夜を越えて、ずっと待ち続ける。
「くすん…。帰ってきてよ…」
ずっと、泣き続けた。
いつしか、何日もすすり泣きが聞こえる。
羽間市では、すすり泣きする子供を度々見掛けるようになり、ずっと泣き止まない子供に恐怖を感じた。
「武巳兄ちゃん…ボクを撫でてよ…」
「ボクに笑いかけてよ…武巳兄ちゃん…」
幼い子の口から出た、悲痛の言葉は──悲しかった。
愛する人を亡くした者にとって、それは悲しく辛いモノである。
─☆─☆─☆─
目覚めた時、オレは異界に居た。
「お、オレは異界に何故居るんだ?」
そう、呟くとフッと手に違和感を感じた。
オレの手には──死神の鎌があった。
「な、なんだよ…」
少し、不安になった。
どうして、この鎌があるんだ?
オレの命を削ったこの鎌が。
「お前、オレを気に入ったのか?」
その言葉に、鎌は淡い青の光を放ち、応えた。
「そっか…、宜しくな」
そう言って、オレは異界を歩く。
全てに於いて、禍々しい異界。
その時──何処からか、すすり泣きが聞こえる。
「想二が泣いているんだな…」
オレは想二のすすり泣きを聞いて、罪悪感を感じた。
すると──。
鎌がその子に会わせてあげる≠ニ言っているかのように淡い緑に光る。
その瞬間、オレは想二の前に居た。
「武巳兄ちゃん…、帰ってきてよ…」
「想二、泣き止んでよ」
「武巳兄ちゃん…?」
オレは想二の頭を撫でながら、笑う。
「ただいま、想二」
「武巳兄ちゃん〜っ!!」
想二はオレの腕の中に、飛び込んできた。
幼い想二には誰かが、居なくてはならない。
「ごめんな…もう、居なくならないから」
「うん、いいよ!」
─☆─☆─☆─
*後書きと云う名の反省*
この話で14作目になりました。
私、更新してばっかりだね(笑)
今回は、前の話の続きを書いてみました。
シリアス、切ないをテーマに仕上げました。
読んでいただき、ありがとうございます。
『missing -甲田学人』『蒼磁』