雪解け(未来編) | ナノ
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 寝ても醒めても


死覇装に着替え、髪を梳かそうと鏡台の前に座って血の気が引いた。

「これは……」

顎の下、首に咲いている真紅のそれ。
指先でそっとなぞると、昨晩の情事がありありと思い出される。

昨晩、彼は酒に酔っていた。
身長が乱菊さんを追い越して少ししてから、彼はこれまで飲まなかったお酒を飲み始めた。
勿論自ら飲みに行くようなことはなく、これまで欠席していた、隊長同士の親睦会と称した飲み会に出席するようになったと言うだけだ。

彼はこれまで規則正しい生活を心がけ、煙草も勿論、お酒は飲まなかった。
雛森副隊長によれば、お祖母さんが、不摂生をし身体が出来上がっていないうちから煙草や酒を摂取すると大きくなれないと言っていたそうだ。
彼はしっかりそれを守っていたのだが、彼も私と同じく乱菊さんの身長を指標のようなものにしていたのだろうか。
突然出席すると言った時は少し驚いたが、成長した彼を見れば違和感はなかった。
勿論、まだ成長過程であることには違いないのだけれど。

そう言う経緯があり、最近になって彼はお酒を飲み始めたのだが、昨日はその現場に初めて居合わせたのだった。
昨晩はその隊長同士の親睦会があった日で、彼の自宅に来ていた。
彼が帰宅して、初めてお酒を飲んだ姿を目にしたのだ。
正直、動揺した。
彼の様子がいつもとは違っていたから。
お酒を飲むと人が変わると言うのは、珍しいことではない。
彼の場合は、少し強引に、意地悪になると言う変化があった。
いつもとは違う彼の表情に、言葉に、眼差しに、自身に触れる手に、ひどく胸が高鳴った。
いつだって素敵だと思っているし、気持ちは変わらないと思っていたけれど、人はやはり普段との相違に弱いらしい。

少し強引に、そして意地悪に彼に抱かれた。
頭も身体も溶けてしまいそうな中、彼にしがみ付き、与えられる快感に堪えるだけ。
考えることなんて出来なくて、彼の全てが刺激で。
何度も高みに押し上げられ、気を失うようにして眠りについたのだった。
普段にも増して余裕がなく、彼がどこに痕を残したかなんてことは全く気が回らなかった。

異常に白いこの肌は、些細な傷さえ目立つ。
引っ掻き傷さえ目立ち、必ずと言って良い程周囲に指摘される。
一筋すら目立つのに、指の先程もある真紅のそれは、はっきりと存在を主張していた。
真正面から横にずれてはいる為横を向けば反対側からは見えないが、死覇装は愚か髪を下ろしていても全く隠れていない。
恐らく誰が見ても一目で気が付く。
彼は肌を重ねる度に痕を残したけれど、見えるところにつけたことは一度もない。
昨晩は酔っていた所為だろう。

さてどうしよう、と考えてみるが、このまま出勤すると言う選択肢は殆どない。
何故ならこれを消してしまえる手段を持ち合わせているからだ。
これくらいならば、斬魄刀の能力で血行を促進し内出血を散らしてしまえば消えるだろう。
しかし消すにしても、彼に一声かけておいた方が良いだろう。
彼はここに痕をつけたことを覚えているかもしれないし、態とここにつけたのかもしれない。
そこまで考えて、今度は態とだとすると何故だろうと疑問が湧く。
しかし考えても分からない。
本人に聞いて、それでどうするか考えよう。


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