「どっ、どうしたの?!」



大声を聞きつけて、水谷が病室に入ってきた。
栄口は水谷にに駆け寄って、あわあわと身振り手振り説明し始める。




「えぇ〜〜〜〜っ!!泉の記憶が戻ったのぉっ?!!」




大げさとも見えそうな驚き方をして、水谷は俺の方へ近寄ってくる。

「泉っ!!お、俺の事ワカル……?」



おろおろしながら聞いてくる水谷に、俺のいたずら心がむくっと湧いてきた。



「えーっと…。えー…、こ……く…」

「栄口、泉の記憶ホントに戻ったの?!俺の事ワカラナイみたいなんだけど……」


栄口は俺の言おうとしていることが分かっているのか、楽しそうに笑っている。



「ねぇ、泉。ホントに覚えてないの〜??」


「あ!」


「思い出した?!」


「ああ。米だろ?」




ちっが〜うと怒りながらも、俺の記憶が本当に戻ったのが分かったみたいで水谷は嬉しそうに笑った。






結局、俺は夜も遅いしこのまま病院へ泊ることにして、水谷と栄口は一緒に水谷家へ帰って行った(最初から泊る予定だっったらしい)。

俺としてはいい気分じゃないっていうか、水谷に対して腹が立つけど今日は手を出さないでやった。
そのかわり明日学校行ったとき栄口に変なことをした様だったら殴ってやる……!







明日の計画を頭の中で組み立てて一笑い。
夜も遅いし寝ようとして、浜田に連絡しておこうと思って携帯をカバンから取り出す。

ぱくりと開いて待ち受け画面を見ると、着信が一件。

メールにしようか電話にしようか迷っていたところなので、そのまま履歴から呼び出した。

プルルルル、プルルルルとコール音が2,3回響き浜田がでる。

「泉!」

「……俺じゃなかったらどうすんだよ」

「いや〜、名前見たら居てもたってもいられなくて…………」

「バカか……。つか、いつまで起きてんだよ。もう十二時だぞ」

「ちょっと用事があったんだよ」

「あっそ。俺が心配で寝れねーのかと思ったよ」


少し沈黙が続いて、バレた?って少しおどけた浜田の声。
バイトで疲れているはずなのに、そんなの全然感じさせずに、逆に俺を元気にしようとしてる声。



駄目だと分かってるけど、ついそれに凭れかかってしまう。





「浜田…………」


「……ん」




わかってる、わかってるよと浜田は優しく言う。
何が分かってるんだか。

……バカのくせに。つか、あんまカンケーねーけど。






「会いたい、だろ?」


「なっ」





一瞬で思ったことを言い当てられた。降参だ。
やっぱり浜田には敵わない。

あ、そういえば…………



「浜田、俺記憶もどったんだった」







「はっ?!!えっ?!」



「……じゃ、そゆことで」



「ちょ、お、泉!マジかよ!!」



「うるせー。耳元でギャーギャー騒ぐな」




「っ、良かった……!」










はぁっと吐き出された溜め息と一緒に放った涙声は聞いていなかったことにしてやる。

だから、もうすこしだけこのまま…………





















ほんとうに、本当に良かった





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