『俺は……弱いんだよ。お前らが思ってるよりずっと』


泉はそう言った。

でもね、この世には本当に強い人なんていないと思うんだ。

俺も強く生きようとした。

それでも俺は弱いから。

大切な人を失うのが怖いから。


だから繋ぎとめようとしてるんだよ。

失うという恐怖から逃れるために。



でもね、俺は大切な人を失う恐怖を知ってるからこそ、泉が少しでもそれから逃れられればいいと思うんだ。





声に出さなくても伝わるといいのに。

















重たい静寂が部屋を包む。

最後に言葉を発したきり、泉は俯いてしまった。


それでも俺はなんて声を掛ければいいか分からないから黙ったまま。
ヘタに何かを言ってしまうといけない気がしたから。







沈黙が重くてつい口を開きそうになる。
開けそうになっては閉じる。それを繰り返していると、不意に泉が口を開いた。





「栄口」



それになるべく優しそうに返す。






「なに…?」








「早く家、帰れよ」









泉の言葉は俺の期待した言葉じゃなかったけど、俺は構わず続ける。







「…今の泉が皆に受け入れられなくても、俺がずっと傍にいるから」





「みんなが泉から離れていくことなんてないと思うけど、もしそうなったとしても俺が泉と一緒にいるから」




「俺が、泉を守るから――――――…」











ここまで言って、泉の顔を見てみると、泉は静かに泣いていた。
零れ落ちる涙を拭いもせずに、ただ静かに泣いていた。

一息ついて、泉は笑った。




「バカ」




それだけなのに、俺も嬉しくなって自然に笑みが浮かぶ。





「水谷と付き合ってるくせにそんなこと言うなよな」




あいつ嫉妬深いから、聞かれてたら俺が恨まれるだろなんて茶化して笑う泉。

って…




「泉!!」




突然大声を出した俺に、泉はビクッと首を竦めた。



「な、なんだよ…」



「泉、水谷の事………」



「はっ!!ウソだろ……。まさか…」











「「記憶が戻ってる?!!」」





















ガーゴイルは飲み込んだ













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