「こんにちは、泉くん。私は監督の百恵まりあです。志賀先生は今日来れなかったからまた今度紹介するわね。ほら、みんな!順番に紹介していって」






今日は野球部全員が病室に来て、自己紹介をする日だ。
沈みかけている夕日の代わりに明るい白熱灯がこの部屋を照らしている。

それが夕日以上に眩しいのと、目の前にいる巨乳の監督が見ていられなくて何回も瞬きをしてしまう。



「おっ、俺!ピッチャー…の、三橋、廉…です」

あ、この間の蜂蜜色。
俺がジッと目を合わせると、戸惑ったように後ずさりをしている。

「ミハシ…だな。よろしく」

手を差し出すと一時停止してから我に返ったかのように手を握り返してきてそのままブンブンと勢いよく振ってきた。
こいつ握力強ぇー、と思いながら手をこすっていると、ボソッとなにか虫の唸り声みたいなのが聞こえてくる。


黒髪垂れ目で嫌な感じだ。
名前は結局聞き取れなかった。



次は沖。






次は――――――――――…








「セカンドの、栄口勇人です」







「さかえぐち、ゆうと…」






よろしく、と言われて手を差し出されたのが分かった。


でも俺は動けないまんま栄口の顔を見続ける。





栄口は笑顔だった。






笑顔で、なのに、すごく泣きそうにみえて



栄口は気付いてたのかもしれない。







あの時、既に俺が記憶を失っていたこと…。












伝えたいことが分からずに、俺は手を握り返した。























もどりたいのにもどれない



















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