勝ってうれしいはないちもんめ
負けてくやしいはないちもんめ
隣のおばさんちょっと来ておくれ
鬼がいるから行かれない
お釜かぶってちょっと来ておくれ
釜がないから行かれない
布団かぶってちょっと来ておくれ
布団破れて行かれない
あの子がほしい
あの子じゃわからん
この子がほしい
この子じゃわからん
相談しよう
そうしよう
心の中ではないちもんめ
誰が欲しいのかわからないままのはないちもんめ
あのこがほしい
このこがほしい
でも
そのこって誰なんだろう
「泉、着替えないのか?」
授業が終わってボケッとしていたら浜田に声を掛けられる。
次は体育で田島と三橋は仲良く着替えっこをしていた。
「おう」
簡単に返事をしてから制服に手を掛ける。
着替えながら、視線を感じて振り返ると浜田がじっと俺の事を凝視していた。
なんだか居心地が悪くてムッと睨んでみる。
その所為かは知らないけれど、バツが悪そうに視線を彷徨わせながらポリ、と頬を掻いてあのさ…と浜田は口を開いた。
「最近、悩み事でもあるのか?」
「なんでだよ」
「よくボーッとしてるからさ…」
「そうか?テスト週間で勉強のし過ぎかもな」
「でも、お前野球部の勉強会にも参加してないだろ?一体どうしたんだよ」
別にどうもしねーよ、と言って俺は教室を出る。
ただ、何かが欠けてる気がするんだ。何か、大切なものが。
ああ、胸糞が悪い。
今日の昼飯は浜田に奢らせようと考えながら廊下を早歩きで進んでいく。
すると巣山と見慣れているような感じがする茶髪と擦れ違った。
あ、泉!と言って巣山と一緒に手を上げてきたところをみると知り合いのようだったが誰かが全然分からない。
なのに、胸の奥がドクリと暖かくなっていく。
ズキズキと痛みだした頭と心臓を押さえながら俺はその場に立ち尽くしていた。
はるか彼方に見た桃源郷か何か