ふにゃり、
唇に感じた柔らかい感覚
これに似たものを、よく知ってる……
夢の中でも水谷が出てくるなんて、自分はどんだけ水谷が好きなんだとぼやけた頭で栄口は笑った。
あの柔らかい感触は夢なのか現実なのか。
自分でもよく分からなかったけど、きっと現実では無いんだろうなと思うと胸が痛んだ。
水谷は禁止令を一度も破ったことがないのだ。
みずたに、と心の中で呼んでみる。
みずたに、俺、
俺さ、あのとき返事できなかったけど
俺、本当にお前のことが大好きだったんだよ。
自分でもどうしようもないくらい、大好きだったんだ…
お前が俺の事いらないのは分かるけど、もうちょっと好きでいさせて。
ごめん、
ごめんな
「みずたに」
「なぁに?」
「…へっ?!」
独り言のつもりが、返事が返ってきてびっくりした栄口は飛び起きた。
その拍子に
ごちっ
「「痛っ!!!」」
栄口のおでこが水谷のあごにクリーンヒットし、二人して痛む部位を押さえることとなったのだった。
ジェノサイドな僕たち