※89現パロ
Under Lover

「あのねー俺は動物のお医者さんのタマゴなの!人間は専門外!!」

部屋に入るやいなや、バッツは慌ただしくジャケットを脱ぎ、目の前の友人に文句をひとつ言い放つ。

「それはわかっている」
「もー…ホームドクターは?」
「俺は連絡先を知らない」
「……」

そういう大事なことは親父さんから聞いとけよー…と、バッツは喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。

「一応診てみるけど…手に負えなそうだったら病院連れて行けよ」
「…すまない」

客室に入るバッツを見送った後、スコールは居間のソファに腰を下ろし身を沈めた。
目を閉じれば、浮かぶさっきの光景。
雨に打たれながら倒れていたあの少年、もう関わりたくないと思っていたのに…結局、こうして自宅まで運んでしまった。

(何かあったら後味が悪いだけだ)

初めて会った時も同じことを思った。
だから手を差し伸べた。
それだけ、それだけの事なのに…。

(こんなに心がざわつくなんて)

「おーい、スコール」

バッツに声をかけられスコールは我に返る。

「取りあえず肺に変な音しないから大丈夫かと思うけど…熱があるからお前が看病してやれよ」
「…わかった」
「じゃあ、俺帰るぞ。後は大丈夫か?」
「多分…悪かったな」

スコールは礼を言うと、そのままキッチンへ向かう。
何かあったら俺より救急車だぞ!と、玄関からバッツの声と共にドアが閉まった。



***



「とりあえず…冷やせばいいのか?」

冷凍庫にあったアイスノンを持ったままスコールは立ち尽くす。
一応、常備薬も持ってきてみたが、飲める状態なのかもよくわからない。
目の前のベッドで眠る少年を見れば顔色は悪く、表情は苦しそうだった。
額にそっとアイスノンを乗せた瞬間、うっすら目を開けスコールをぼんやり見つめている。

「寒い…んだ…」
「あ、あぁ…」

慌てて外したアイスノンをサイドテーブルに置く。
熱が上がりきってないのか、寒気を訴える少年はそのまま布団を頭まで被り、小さい身体を更に縮こませ丸くなっていた。

「おい、大丈夫か」
「……ごめん」

やっと聞こえる程度のか細い声。
それは暫く何度も何度も繰り返される。

「もういい、喋るな」
「……」
「助けたのは気まぐれと言いたい所だが、正直自分でも解らない」
「……」

スコールはそっと布団に手を乗せる。
もぞもぞと布団が動き、少年が先程より赤くなった顔を半分覗かせた。

「熱いのか?」
「良かった…」
「?」
「…助けてくれたのが、スコールで」

熱のせいか涙が溜まった目を細め笑う。
つられて口元が緩みそうになったスコールは、慌てて手で隠した。

「…あのさ」
「何だ?」
「ちょっと熱くなってきた」
「そうか」

ならば、とスコールは先程のアイスノンを差し出す。
少年はゆっくりと腕を伸ばし受け取ると額に乗せ一言…。

「そういう事じゃないんだけどなぁ…」
「?」

ゆっくりと瞳を閉じ、赤い顔をした少年はそのまま眠りについた。


〜続く〜


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