尻尾と勘違い2
※8+9
尻尾ネタ再び

「…何の匂いだ?」

テントの中に居たスコールは、鼻を刺激する匂いの元を辿り外へ出る。
焚き火の傍ではバッツが種類の薬草(らしき物)を鍋に投じ、棒でぐるぐると掻き回していた。

「あ、臭かったか?薬だよ、傷に良く効くヤツ」

グツグツと煮えた鍋の中身は、茶と緑が合わさった何とも不気味な色をしており、加えて強烈な匂いに鼻がおかしくなりそうだ。

「き、効きそうだな…ところでジタンはどこに行ったんだ?」
「周囲を探検してくるってさ」

多分、この匂いから逃げたのだろう…ならば自分もとスコールは薬作りに精を出すバッツに一言告げ、早々にその場から離れようとする。

「あんまり遠くへ行くなよなー」

かけられた声に軽く手を振り、足早に森の中へ入って行った。



***



しばらく森を進めば強烈なあの匂いは無くなり、変わりに森林の心地好い香りが鼻をくすぐる。
周囲に敵の気配も無い。
優しい風が木々を揺らし、スコールの頬に心地良く触れていく。

森を抜けるとそこは崖になっており、さほど高くは無いが先程のような緑は無く、周囲には岩肌が広がっていた。

「あれは…?」

眼下に一箇所だけ岩の間から煙の立つ場所を見付ける。
スコールは、足場を探し降りて近付いてみる。何の煙かと思ったが、それは小さな温泉で、そこには周囲の岩を背もたれに、のんびりと湯に浸かるジタンの姿があった。

(随分とだらしない顔だ…)

気持ちが良いのか、緩みきった顔に思わず吹き出しそうになったスコールは、小さく咳払いをした。

同時にパシャ…と、尻尾がお湯を弾く音がする。
先端しか見えないが大きくゆっくり振られ、こちらも持ち主同様大変リラックスしている様だ。
時折、尻尾の毛並みを気にしながらジタンはバスタイムを満喫していた。

(やはり汚れるのだろう。そういやたまに騒いでいるな)

湯に潜ったりしたかと思えば、空を見上げてぼーっとしたり…その度に時折尻尾はちょこっとだけ顔を出す。
その動きがちょっと面白くてつい見てしまう。

(…リラックスしてても尻尾は動くんだな)

だらん、と湯の中にずっとある訳では無いのか…。
尻尾の不思議な動きを観察すること数分…傍から見たら只の覗きの様な自分の姿に我に返る。
何となく恥ずかしい事をした気分のスコールは、ジタンに声をかけぬままそっと元来た岩場を登り引き返す。
背後から呑気な鼻歌が聞こえてきた…彼が温泉から出るのはまだ先の様だ。

スコールは再び森の中へ消える、薬作りが終わってる事を願いながら…。



***



テントに戻ると例の刺激臭は消えていたが、変わりに甘ったるい香りが周囲を包む。
先程と同じように、バッツはやはり鍋の前に座り何かを作っていた。
スコールに気付くと、満面の笑みで手招きをする。

「今度は何を作っている」
「いやー遅かったな!」

いそいそと、出来上がった薬液?を鍋から小瓶の中に流す。
今度は淡いピンク色で綺麗だったが、やはり匂いが強烈だ。

「何も言うな、俺は解ってるから!はい、これ」
「?」

ほんのりと温かい小瓶を強引にスコールに握らせる。

「俺からの差入れ。いわゆる惚れ薬ってヤツ?」
「惚れ…??」
「まぁ、スコールなら大丈夫かと思うけど、万が一って事もあるし」
「何がだ?」

一人で盛り上がってるバッツに、スコールは少し不安を覚えた。
以前にもこんな事があった様な無かった様な…。

「おい、まさかこれ…」
「ジタンに告白するなら早いほうがいいぞ!さっきみたいにこっそりと見てるだけじゃだめだって!!」
「……?!!」

(いや、あれはただ単にしっ…って、見てたのか?!)

反論しようとするスコールの肩を笑顔でばんばん叩き、バッツは森の中へと消えて行く。

「ジタン呼んでくるからな〜あ、それ用法・用量を守って正しく…だぞ!」

ピンク色の小瓶がスコールの手でキラリと光る。
それを握りしめ、スコールはただ呆然と森の中を見ることしか出来なかった。


〜fin〜


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