アルバイト
※59現パロ
Be happy together
7登場

ジタンがアルバイトを始めた。

ここ最近、やけに携帯いじってるなーと思ったら、バイト探しをしていたらしい。
結局、セシルの紹介で知り合いの店を手伝う事になったんだとか。
そんなに小遣いに困っていたのかと思い、聞いてみると…。

「いや、クジャがくれるけど…いちいち面倒臭いんだよねー」

なるほど…何となく想像はつく。
一言二言多いんだろう。

「それに、自分でも何とか出来るんじゃないかと思ってさ」

うん、ジタンらしい。
とても偉いけど…でも、でもさぁ…。

「俺との時間が減っちゃうじゃないか!!!」
「おい、落ち着け」

日曜のお昼、俺はスコールを半ば強引に呼び出し、いつものファーストフード店で話を聞いてもらっていた。

「自分で小遣いを稼ごうとしてるんだ。立派な事じゃないか」
「そうだけど、なんつーか…」

寂しい…。

格好悪くて大きな声では言えないけど、かなり寂しかったりする。
部活だってやってるし、その上バイトとなれば今まで以上に二人で遊ぶ時間が減ってしまう。

それに、バイト先に変なおっさんとかがいて、ジタンにちょっかい出したらどうしよう…!
いや、セシルの紹介なら大丈夫だと思うけど…。
でも、最近物騒だし…もし、そんな事があったら俺は、俺は〜〜〜!!

「そんなに寂しくて心配なら、一度見てくればいいだろう?」
「え?俺、何か言ってた??」
「心の声がだだ漏れだ、少しは隠せ」
「あはは…そうだな今度行ってみるか…」

ナイスアイデアとばかりに、俺は早速計画を練る。
ジタンに見付かると後で色々言われそうなので、こっそり行く事にした。



***



セシルから紹介され、俺はバイトを始める事にした。
バッツに少々不満げな顔をされたが、悪い…もう、決めちゃったんだよね。

「ジャガイモここでいい?」
「ありがと!ジタン、重かったでしょう」
「いやいや、このくらい全然!」

力仕事は男の仕事だぜレディ、と言いたい所だったが…彼女は更に人参、玉ねぎが入った箱を難なく抱えていた…結構力持ちなんだな…。
ここはセシルの喫茶店から更に数分、笑顔が素敵な女店主ティファが切り盛りしている弁当屋で、俺は主に配送を任されている。

「すごい量だな、これ明日の分?」
「そう、結構売れるのよ。あ、クラウドお帰り」
「あぁ」

ドアチャイムを鳴らし入って来たのは、ティファの幼なじみであるクラウドという兄ちゃんだった。
いつ見ても髪型バッチリきまってて、弁当屋に間違って入って来ちゃったーみたいなシャレオツな服装をしている。
まぁ、要するにイケメン君なんだけど…その手にはお使いで買って来たであろう、トイレットペーパーの袋が二つ…。

「そうだクラウド、ジタンに配送先を教えてあげて」
「地図を見るより、直接行った方がいい」
「じゃあ、バイクでお願い。何件かあるし…」
「解った…行くぞ」
「しっかり確認してきてね」

了解、と俺は渡されたヘルメットを被り外へ出る。
クラウド、メット被ったらあんなにきっちりセットしてある髪型潰れちゃうよなー…なんて余計な事を考えながら、慣れないバイクの後部座席に少し緊張した。

「しっかり掴まっていろ」
「オッケー…って、いきなりとばすなぁぁー!」

轟音と共に勢い良く走り出すバイクに舌を噛みそうになる…もしかして、この人…走り出したら止まらない系?
俺、ちゃんと確認出来るんだろうか…いや、それより無事の帰還が…。
冷や汗と共に頬に触れる風は冷たく、俺は落ない様に必死に掴まった。



***



「あの弁当屋か…」

セシルからジタンのバイト先を聞き出した俺は、目的の店がよく見える向かい側の角に身を潜める。
一応、変装もしたので一目見て俺だと気付く事は無いはずだ…帽子にサングラス、親父のクローゼットから拝借したトレンチコート…完璧!

(でも、何でセシル笑ってたんだろう?)

コートの襟で口元を隠しながらチラチラと様子を伺うが、まだ準備中で窓ガラスから人影が少し見える程度だった。
その店先には弁当屋には似合わない、ちょっと厳ついバイクが停っている。

(危ないヤツが出入りしてたりして…)

暫くすると、横のドアからヘルメットを被ったジタンが出て来た。
その後ろを俺の知らない金髪チョコボヘッドの兄ちゃんが続き、ジタンに何か言われ渋々ヘルメットを被っている。
そのまま二人乗りで勢い良く飛び出していく。

(何、あの〇ーマの休日状態!!)

俺は隠れている事も忘れ角から飛び出したが、バイクはすでに彼方へと消えていた。



***



「…ただいま」
「お帰りなさい…大丈夫?ジタン」

放心状態の俺を心配そうに見るティファに、苦笑いを送る。
店に入ったクラウドがティファと何か話を始めたので、俺は配送先を再度確認しておこうと地図を広げペンを持つ。
暫くして、話を終えたクラウドがやって来た。

「おい、ジタン」
「何?」
「あそこにいるヤツはお前の知り合いか?」
「??」

クラウドが指を差した方向に、コートを着て帽子を被りサングラスをかけた男が挙動不審な動きを…って、おい…。

「バッツ…」

普段と全く違う何とも怪しさ全開の格好だったが、明らかにバッツだ。

「ジタンに会いに来たのか?」
「え、いや、約束はしてないけど…」
「行ってこい、明らかに不審者だぞ」

このままだと営業妨害にもなりかねない。
何やってんだアイツ…。



***



(うーん、よく見えない)

背伸びをしたり屈んだり、色々と試してみたが店内の様子は伺えなかった。
さっきジタンが例の兄ちゃんと帰って来たので、中にはいるはずなんだけど…。

…何やってんだ俺。

ふと、我に返る。
寂しい、心配は嘘じゃ無い。
でも本当は自分以外の誰かと仲良くしている姿を見るのが嫌で…。
これから今日みたいな事いくらでもあるのに。
お互い進む道は同じとは限らないのに。

(俺ってこんなヤツだったのか)

こんな子供っぽい嫉妬はジタンには気付かれたくない。

(…帰ろうかな)

そうだ、家で待とう。
ジタンが帰って来たら、部屋に押しかけて沢山話をするんだ。
そうすればきっと大丈夫、俺のこんな気持ちも吹き飛ぶに決まっている。

「おい」

でも、そうだな…あのイケメン兄ちゃんは要注意って事で…。
いやいや、美人のお姉ちゃんの方か…?
ジタン絶対張りっ切っちゃいそうだよなぁ。

「おい、バッツ!」
「うわぁ、ジ、ジタン?!」

振り返ると、そこには腕組みをして仁王立ちをしているジタンが居た。

「何しに来たんだよ」
「え、えーと…散歩」
「…その格好で?」
「…イ、イメチェンとか」

似合わねーぞ!と、思いっ切り背中を叩かれる。

「その、バイト…頑張ってるかなーって思ってさ…」
「うん?」
「邪魔して悪かった、もう帰るよ」
「…あ、おい!」

立ち去ろうとした俺の腕をジタンが思いっ切り引っ張った。

「もしかして心配して来てくれたのか?」
「え、と…まぁ、そんな感じ」
「大丈夫、力仕事は負けてるけど…何とかやっていけそうだし」
「……」
「だから、そんな心配すんなって!」

そのまま俺の腕にしがみつき、笑うジタンにつられて自分も笑みがこぼれる。

「帰ったらバッツの部屋行くからさ」
「うん」
「じゃあ、戻るよ」
「頑張って」

手を振りながら店に戻るジタンを見送った俺は、サングラスを外しコートを脱ぐ。
身体に受ける風は冷たいが、心はほんのり暖かい。

「…そんなに似合わないかなぁ」

丸めたコートを抱え、足早に帰路を辿る。
早く、早く帰らなくちゃ…大好きな人を待つために。


〜fin〜


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2013 1.18 UP
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