再会
※89現パロ
Under Lover

「おーい、スコール」

大学内のカフェテリアで一人読書に耽っていたスコールは、聞き慣れた声のする方向へ顔を上げる。
コーヒーを受け取ったバッツが、一目散に向かって来た為本を閉じ、机に置く。

「お邪魔するぜ〜」
「…あぁ」

向かいの席に座るやいなや、コーヒーも飲まずにずずっと顔を寄せてくる。
反射的に身体を後退させたスコールは、多分これから聞かれるであろう話題を察し、ウンザリした表情を見せた。
そんな事はお構いなしに、バッツはニヤニヤしながら更に近付く。

「なぁなぁ、猫ちゃんは?」
「子猫は元気になった。また何処かへ行ったらしいが」
「そうか、大丈夫かなー…じゃ、なくて!そっちも気にはなってたけど、あっちの方!!」
「別に何も無い」

キッパリそう言うと、スコールはまた本を開きページをパラパラ捲っていく。

「…何も?」
「何も」
「えーと…お礼ってヤツしてもらったんじゃないの?」
「礼?朝食を作って慌ただしく帰っただけだ」
「あ、そう…なーんだ俺はてっきり、素敵な夜を過ごしたんじゃないかと思っていたんだけどー」

面白い話が聞けそうに無いと解ったバッツは、つまらなそうにコーヒーに口を付ける。

「でもでも、少しぐらい何かあっても…」
「しつこいぞ、無いと言ったら…」

昨夜、少年がじゃれ付いて来た事がふと頭をよぎり、言葉を止めたスコールにバッツは興味津々とばかりにまた詰め寄る。

「いいじゃん、聞かせろよ〜」
「何も話す事は無い」

不満そうに騒ぐ友人を置いたまま、スコールは本を抱え足早に店を出ていった。



***



数日後、またも雨の中、スコールは傘をさし家路を辿る。
やや激しく石畳を打ち付ける雨は、あの日を思い出させた。

あの少年は何者だったのか。
何故、自分にくっついて来たのか。
考えても意味が無い事はスコール自身解っていたが、つい頭に浮かんでしまう。

足元を濡らしながら歩き、例の路地の前へと差し掛かる。
思わず立ち止まるが、夕刻とあってか奥はよく見えない。

「何をやってるんだ俺は…」

再び歩き出そうとした瞬間、雨音に混じって小さな鳴き声が聞こえてきた。
それはあの路地からで、あの日の子猫に似ていて…何度も何度も響くその声はとても切なく、スコールの胸をチクリとさせる。

(見るだけだ、もう関わらない)

そう誓い、路地に入り、狭く散らかった道を進んで行くと街灯に照らされた子猫を見付けた。
間違いなく少年と一緒にいた子猫で、身体を震わせ、か細い声を必死に出している。

(悪いな、俺はもう…)

瞬間、子猫が一声大きく鳴き、その背後に金色がぼんやりと映る。
スコールが近寄ると、そこにはあの少年が横たわる様に倒れており、小柄な身体は雨に濡れ動く気配が無い。

(関わらないと誓ったんだ)


〜続く〜


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2012 10.14 UP
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