アイ・ラブ・ユー
※5→9

「だからさ、好なんだよね」
「おう、ありがとな」
「……どういたしまして」

うっかり口を滑らして言ってしまった人生初の告白は、あっさり幕を閉じた。
きっといつもの冗談だと思ったのだろう。
そう、それで良いんだ。
だって、目的を果たしたら俺達は二度と会えないのだから…。



***



賑やかな仲間達から離れた俺は、ひとり森の中へと進む。
ガサガサと音を立て、足首ほどに伸びた草を分けて歩いて行く。
足が重くて上がらない。
何だってこんなに歩きにくいんだ、くそ。

そのまま立ち尽くした俺は、自分の足元を見る。
この旅中履きっぱなしだったブーツは薄汚れて、少しくたびれてきた。
…こんなになるまで一緒に旅をしてきたのになぁ。

瞳を閉じれば、アイツとの思い出ばかり。
様々な出来事、喜びと悲しみ、そして一番大好きだった笑顔…。
あぁ、キリがないや。

自分が何だか恋する女の子みたいで、ちょっと引く。
旅を始めた頃は、まさかこんな気持ちになるなるとは思ってもみなくて。
こうなってしまった張本人を恨めしくも思うけど、本当に好きで好きでたまらないんだ。

…一度だけ、頬に触れた事があったっけ。
あれは…そう、いつも通りふざけ合った後だったかな。
夕影に染まった横顔があまりにも寂しそうで…今にも消えそうで…思わず手を伸ばしてしまった。
微かに震える自分の指、驚いたアイツの表情、でもすぐに笑ってくれたっけ。
そうだ、きっとあの日からなんだ。
解けない魔法にかかったのは。

神様、元の世界に帰ってもこの魔法を解かないで。
この世界も救ってみせるから。

それでも駄目だと言うのなら、何回でも何百回でも何万回でも俺は好きだって唱えてやる。
瞼に焼き付けたあの笑顔だって決して忘れるもんか。

声を傍で聞いていたい。
触れていたい。
ずっとずっと一緒に…。

なぁ、だから神様…その夢が叶うなら、俺は何だってするよ。


〜fin〜


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2012 9.10 UP
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