尻尾と勘違い
※8+9
一度やってみたかった尻尾ネタ

ひっそりと静まり返ったテントの中、スコールは目を覚ましゆっくりと身体を起こす。
敵の気配は感じない…森の中、目立たない所に潜んだつもりだ。
小さいランプの灯りだけを頼りに、周囲を見回す。
バッツもジタンもよく眠っており、大きな異常は感じられない。

(何か…いや、気のせいか…?)

座り込み、思案するスコールの左手にさわり、と何かが触れた。

(……?!!)

思わず引っ込めた左手を握り、触れた先へ視線を落とせば、隣に寝ているジタンの毛布から尻尾がはみ出ていた。
時折、先っぽが小さくぱたん、と振られており、それが当たっていたのだとスコールは推測する。
自分が起きた原因に大きな問題が無い事が解り、寝床に入ろうとした瞬間、ジタンがゴロンと大きな寝返りをし、スコールの陣地を奪う。

今まで一緒に旅をしていて、お世辞にも他2人は寝相が良いとは言えなかったが、今日は特に酷い。
スコールの寝床三分の二程を独占したジタンは起きる事無く枕を抱え、毛布を半分身体に巻き付け爆睡している。

あまりにその潔さっぷりと、疲労しているであろう仲間に起きろとも言えず、スコールは残された寝床に座る事しか出来なかった。

ぱたん、

先程から時々先端のみ振られる尻尾に視線を移したスコールは、思わずじっと眺める。

初めて見た時は不思議だった。
尻尾の生えた人間なんて、自分のいた世界ではコスプレ位でしか存在しない…と、思う。

(まぁ、ここには他にも色んなヤツがいるがな…)

初めは本物かどうかさえも謎だったが、大概そういう質問はほとんどバッツがしてくれたので、自分は後ろで聞いていた。
ジタン本人は質問にフランクに答えていたが、ふと悲しげな表情を見せた事もあった気がする…あれは何故だったのだろう。
やはり、珍しがられて色々苦労があったかもしれない…もし、そうなら興味本位で色々聞いて悪かったかも…。

とは言うものの、ジタンの感情に合わせよく尻尾は、見ていて面白いし飽きないのが本音だ。

ぱたん、

再度小さく振られる尻尾を見つめながらスコールはゆっくりと瞳を閉じる。
座ったままで少々寝にくいが仕方ない。
明日、少しだけ文句を言ってやるからな…心の中で誓い、眠りについた。



***



翌朝、結局スコールはあまり熟睡する事が出来ず、朝日に目を細めながらテントから出た。
小さく縮こませていた身体を伸ばし、深呼吸をすると心地好い森林の香りがする。

「スコール早いなぁ〜…」

次いで、大きな欠伸をしながらバッツがのそのそと起きて来た。

「あまり眠れなくてな…」
「そりゃそうだろ」
「?」

会話がいまいち飲み込めず、ニンマリ笑うバッツに怪訝な顔を向ける。
こういう笑みを浮かべる時は、大概とんでもない事を言い出したりやらかしたりする事をスコールは思い出した。

「昨夜、随分と熱心にジタン見てたじゃん」
「あ、あれは…」
「いいって、何も言うなスコール!俺は解ってるぞ!!」

ばんばんと両肩を力強く叩かれ、バッツは一人でうんうん、と納得している。

「何かあったら協力するからな、頑張れ!」
「……」

(言わせて欲しいし、何も解ってないし、何を頑張れと…!)

実は尻尾の観察をしてました…と、言うタイミングを失ったスコールは、目の前で一人盛り上がるバッツに一抹の不安を感じるのだった。


〜fin〜


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2012 8.26 UP
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