chance!
※59現パロ
Be happy together

「この間のゲーム持って来たぜ〜」
「あぁ、うん」

とある土曜の夜、新作のゲームを嬉しそうに抱えながら、ジタンが遊びに来た。

父親は激務であちこち飛び回っている為、ほぼ独り暮らし状態の俺の事を気にしてくれているのか…それとも部活で中々遊べない埋め合わせなのか…。
ここ最近は、必ず週末の夜になるとDVDやゲームなどを抱えて遊びに来てくれる。
もちろん嬉しいし、俺はいつでもウェルカムなんだけど…。

けど、けど…DVDを見たり、ゲームをしたり、ただ喋ったり…で、そのまま寝オチ…という健全過ぎるパターンがほとんどだ。
俺としては、もうちょっとステキな展開があってもいいんじゃないか?等と淡い期待を胸に秘めていたりする。
悶々とゲームのコントローラーを握りしめる週末の夜…あぁ、分ってる、自分の努力不足だって事ぐらい。

スコールにこの間、愚痴ったら頑張れと言われただけだし…?
とは言え、どう頑張ればいいんだ?
どういう経緯でこう、イイ雰囲気的な流れへもっていけばいいんだろう?

俺の気持ちを知ってか知らずか、隣にちょこんと座っているジタンは、いつも通りご機嫌にゲームを楽しんでいる様で…。

「何だよバッツ、本気出せって」
「うー…今日は何だか…」

あまりにジタンの1人勝ちが続き、面白く無いのか俺を見上げながら、不満そうな表情を見せる。

「あ、じゃあ何か賭けようぜ!それなら燃えるだろ?」

ジタンの提案に俺の悶々とした脳内が反応する。
それは、自分にとってこの上なく魅力的な取り引きで…。

「…何でもいいのか?」
「おう、昼飯でも夕飯でもおやつでも何でも!」

ニコニコと俺を見ながらもっともらしい報酬の内容を言うジタンに、俺は勇気を出して一言。

「…ジタンがいいな」
「は?」
「俺が勝ったらジタン頂戴」

暫しの沈黙の後、ジタンと目が合った。
驚いた表情、そのまま互いに動きが止まる…自分の心臓がドキドキして落ち着かない。

「…え、えーと…それはどういう…」
「そ、そのまんまの意味だよ…ジタンが欲しいんだ」
「……」
「……」

更に沈黙が続く。
妙な空気が俺達を包む…い、言わなきゃよかったかな…。
ふいに視線をTV画面にしたジタンは小さな声で呟いた。

「…か、勝ったら…だぞ」

顔は見えなかったが、多分照れているのが声から分かる。

「…マジで!?いいの?」

思わず上ずった声が出た。
絶対負けねーからな!と叫ぶジタンに、俺も拳を握り締め同じ台詞を言う。
このチャンス、無駄にしてなるものか…!



***



「嘘、だろ…」
「やった、勝ったぜ!」

勝利のガッツポーズを決め、俺は本日初勝利をあげた。
何だろう、この負ける気がしない感は…ご褒美?があるとこうも力を発揮してしまうのか。

「お前、その力さっきから出せよ…」
「いやー能ある鷹でゴメン、ゴメン」

はしゃぐ俺にジタンの冷ややかな視線が送られる。
もちろん、賭けにも勝った事になってしまった訳で…俺の望みは…もちろん。

「ジタン」
「…な、何だよ」

サッと身体を避けられる。
ちょ、そんないきなり襲ったりしないってば。

「俺、勝っちゃったな」
「……」
「だからさ、約束通りジタンを頂戴…」

自分にしてはちょっと格好つけた声を出し、TVとゲーム機の電源を落としてそっと肩を抱いてみる。

よし、いい雰囲気だ…!

「わかったよ…」
「ん?」
「だぁーっ!もう、煮るなり焼くなり好きにしろって!!」

力を込めて叫ぶジタンの男らしい姿にガクッと力が抜ける。

でも、それはきっと照れ隠し…長年の付き合いだ、そのくらい解る。
俺は深呼吸をし、気を取り直してジタンの手を取った。

「どこ連れてくんだよ」
「え?俺の部屋だけど…ジタンはここでいいの??」
「……」

真っ赤な顔を思いっきり横に振っている。
普段見慣れないその仕草が可愛いくて、思わずジタンの手に軽く口付けた。
そんな俺だって内心ドキドキしっぱなしだったりする。

でも、頑張りマス。
だって…せっかくのチャンスだもの…!

俺はジタンの手を軽く引っ張り、静まり返った居間を後にした。


〜続く〜


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2012 6.30 UP
その2に続きます
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