午後のひととき〜2
※59現パロ
Be happy together
8さん登場

少し蒸し暑い学校帰りの土曜の午後、俺はバッツといつものファーストフード店で待ち合わせをした。
店内に入り、注文を済ませ二階へ上がる。
昼食の時間は過ぎているというのに店内は混んでいたが、先に到着していたバッツが奥の席で手を振っていた。

「久し振りだなぁスコール、元気だったか?」
「テスト期間だったからな…そっちはどうだ」
「ぼちぼち…あ、テストはノーコメントね」

苦笑いを浮かべながら、ハンバーガーにかぶりつくバッツにそれ以上は聞くまい…と、俺もアイスコーヒーに手を伸ばす。

「ジタンは部活か?」
「そ。意外と真面目にやってるみたい」

つまらなそうにストローをくわえ、ジュースを勢い良く飲んでため息をついている。
要するにジタンに構ってもらえなくて、俺に連絡した…と言ったところか。
昔からそんな役回りだった気もするが、もう、慣れた…いや、慣らされたんだな、きっと。

「部活頑張るのはいいけどさー…最近、遊んでくれなくてさー…」
「お前も一緒に入部すればいいじゃないか」
「俺が?うーん…特定の部に入るのって合わないかも…」

バッツは中学時代も帰宅部だったが、声がかかれば助太刀と様々な部活に顔を出していた事を思い出す…きっと、そういうスタンスが合っているのだろう。
何より同じ部活に入ろうとすれば、当のジタンがごねそうなのが目に浮かぶ。

「いつも部活が終わるまで待ってるんだよ」
「あぁ」
「この間、待ちきれなくて覗きに行ったんだけど…女子部との合同練習だったみたいで、ジタンもんのすご〜い楽しそうでさ〜!」
「そうか(目に浮かぶな…)」

『う〜わ〜き〜も〜の〜…』呪いの様な声を上げて机に突っ伏したバッツに周囲の視線が集まる。
おい、落ち着け…!って、違う、俺じゃない!俺まで見るな!!

「おい、バッツ…」
「それにさ、もうかれこれ告白して半年以上経つんだけど…」

急にキッと顔を上げ、両手で机を叩き、奴はとんでもない言葉を口走った。
しかも大声で…。

「ジタンってば、エッチな事させてくれないんだぜ!!」

目の前が遠のき、全身から見えない汗が吹き出しそうになった俺だったが、バッツの口にフライドポテトを突っ込み黙らせる。
周囲からクスクス声とヒソヒソ声が聞こえてきた…頼む、空耳であってくれ…。

(絶対勘違いされている気がする…)

もごもごとハムスターの如くポテトを口一杯に頬張り、何とか咀嚼&飲み込む事に成功したバッツはジュースを勢い良く飲み言い放った。

「で、どうしよう!対策しないと俺の青春真っ暗なんだけど!!」
「………知るか!」

〜♪〜♪
瞬間、テーブルに乗せていたバッツの携帯から軽快な着信音が鳴り、パッと明るい表情になった奴は意気揚々と電話に出た。

「あ、ジタン?うん、今スコールと一緒だぜ〜…来れそう?んじゃ、待ってる」

ほくほくと携帯を切り『ジタン来れるって!』満面の笑みを向けてきたバッツに呆れたというか疲れたというか…いや、もういい…。

「…幸せそうだな」
「そうかぁ?これでも色々悩んでるけどなぁ」

大いに悩め、そして苦労しろ…と、心の中で呟く。
この数分で一週間分ほどの疲労感を味わった俺は、少し氷が溶け薄くなったアイスコーヒーを一口飲んだ。



***



ほどなくして、階段を上ったジタンがキョロキョロと俺達を探している姿が見えた。

「おーい、ジタンこっち!」
「バッツ、声デカい…って、どうしたんだよスコール、疲れた顔して」
「聞くな…」

イケメンが台無しだな!いつもの口調で喋りながら席に着く。
その隣ではバッツがうんうん、とジタンに同調していた…おい、誰のせいだと。

「それよりさ、何か今日やけに視線が刺さるっつーか…」
「俺、何も感じないけど?」
「やー…もしかして、俺達目立ちゃってる?まいったなぁ」
「……」

きっと違う方向に解釈しているに違いない…ヘラヘラ笑うジタンを見ながら、俺はしばらくこの店に近付かない事を誓うのだった。


〜続く〜


- - - - - - - - - -
2012 6.3 UP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -