ストロベリー
※59現パロ
Be happy together
「聞きたいこと」後日談

「いいか?絶対余計な事喋るなよ」
「わかってるって…俺達は腐れ縁の幼なじみ〜だろ?」
「そうそう、頼むぜ…」

何度も念を押される度に適当な返事を返していく。
俺的には別に秘密にしなくてもいいんだけどー…と、反論したら怖い顔で睨まれた。
…はい、ごめんなさい。

ジタンの後ろをくっついて到着したのは、自宅から駅を超え、更に奥にある閑静な住宅街。
目の前には落ち着いた色の煉瓦の壁に、綺麗に施されたガーデニング…月型モチーフの看板が何だか可愛らしい。
そう、俺達はセシルがやっている喫茶店に遊びに来たのだ。

「いらっしゃい」

カランとドアチャイムの音を鳴らし中に入ると、カウンターの中から昔と変わらぬ穏やかな笑顔のセシルが居た。

「わーセシル変わってないなぁ」
「バッツも大きくなったね、見違えたよ」
「お邪魔します…」

どうぞ、と促されカウンター席に並んで座ると、タイミング良くコーヒーを出してくれた。
店内は全体的に大人っぽい内装で、あまりこういう所に縁の無い俺とジタンはそわそわしながらカップに口を付ける。
いかにもコーヒー!って味が口に広がり、いい香りが鼻をくすぐる。
うん、難しい事はよくわからないけれど…美味しいなぁ。

「ゆっくりしてってね、今、食事も出すから」
「あ、おかまいなく」

そんな広くないカウンターの中でてきぱきと動くセシルを見て、つい期待してしまう。
そういえばお腹空いてきたかも…。

「おまたせ、口に合うといいんだけど」

そう言って、セシルはジタンの目の前に巨大なパフェをどん!と、置いた。
通常サイズの倍はありそうなそのパフェは…アイスやら生クリームやら苺等のフルーツがこれでもかと乗っかっており、美味しそうだけどいかんせん量が凄まじい…。
…当のジタンは目を見開いてぽかんと、パフェを見上げている…そりゃそうだよな。

「あの…これって…」
「うちのオリジナルでね、結構人気なんだよ。さ、食べて食べて」
「いや、でもこの…」

好意を無下にも出来ないのか、途中まで出かかったセリフを飲み込んだジタンは両手を合せ「い、頂きます…」と、勇敢に巨大パフェに挑んでいった。

まさか俺にも同じものが…と、ヒヤヒヤしながら待っていたのだが、目の前に出されたのはミックスサンドイッチとフライドポテトだった。

「こっちも人気あるんだよ、どうぞ!」

具材がきっちりみっちり挟まっていたが、一口サイズに切ってあるため食べやすく、味もとても美味しくて一気に食べてしまった。

「ごちそう様です〜」
「おかわりいる?」
「頂きます!」

勢い良く返事をした俺は、隣のジタンを見る。
どうやら、いかにして崩さず食べるかを思案しながら食べている様で、苺がグラグラと不安定そうに揺れている。

「はい、バッツどうぞ」
「どうも」

二皿目を受け取った俺がサンドイッチに手を伸ばしかけた瞬間、カウンターから身を乗り出してセシルが小声で話しかけてきた。

「ちょっと聞きたいんだけど…ねぇ、もしかして二人は付き合っていたりする?」
「へ?」

いきなり内緒にしとけ!と、口止めされていた事をあっさり言われ、動きが止まってしまった…手からサンドイッチがスルリと落ちていく。
呆然とする俺の横に居る、パフェと格闘するジタンをチラッと見て、セシルはまた小声で言葉を続けた。

「この間ジタンに会った時に、もしかしてそうかな〜って思って」

だって動揺する姿が可愛くて!と、クスクス笑うセシルにつられて俺も笑ってしまった…何だジタン…バレバレじゃんか。

「影ながら応援してるよ、頑張ってね」
「あはは…ありがとうございます」
「うわああ〜!」

ジタンの叫び声と共に苺がぽとん、と大きな器から落ちていく。
俺は肩を落としガックリするジタンのスプーンを奪い、新たにアイスクリームをすくい取った。

「よし、俺が上手に崩さず食べさせてあげよう」
「バカ、いいって!」
「いいから、いいから」
「よくねーよ!」

パフェの前で攻防を繰り広げる俺達を、カップを拭きながら見ているセシルは何だか楽しそうだ。
焦っているのか、ジタンの顔はちょっと赤い。

「だって僕分かっちゃったし」
「うん、セシルは何でもお見通しだなぁ」
「……??!」

ジタンの目の前にアイスが乗ったスプーンを突き出す。
観念したのか、パクリとスプーンをくわえたジタンの顔は更に紅潮しており、テーブルに落ちた苺みたいな色をしていた。


〜続く〜


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2012 5.15 UP 
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