聞きたいこと
※59現パロ
Be happy together
短文 4登場

ある晴れた日曜の午後、俺は兄貴であるクジャのお使いというかワガママというか…とにかく買い物を命じられた。

『あの銘柄の紅茶以外は御免だよ!』

どうやらお気に入りの紅茶が無くなったらしい。
朝から大騒ぎしてるので、適当に台所にあったフツー?なやつを煎れてみた。
ばれないと思ったんだけど、更に騒ぎ立て、煩いことこの上ない。

俺にしてみたらどれもあんまり変わらないんだけど…。
そりゃ、何となく美味しいとは思うけどさ。
とにかく、アイツの不機嫌度がMAXになる前に、駅の向こう側にある、輸入品が充実したちょっとお高めのスーパーに足を運んだ。

「全く…この店遠いんだよな〜あ、あった」

目的のブランド紅茶を購入し、自宅へ戻る道を進んでいく。
駅を超える前に大きな公園が目に入り、俺はひと休みしていく事にした。
そういや、ここって子供の頃バッツと遊びに来てたな…少し家から遠いので時々だったけど。
木が沢山あって、木登りに最適だったなぁ…。

「ふぅ…」

ベンチに座り、一息つく。
見上げれば大きな木から漏れる光と、柔らかな新緑の香りが身体を包んで心地良い。
目を閉じて、身体の力を抜けば、このまま眠ってしまいそう…。

「…ジタン?」
「ふぁ?」

不意に声をかけられ、素っ頓狂な声を出してしまった…。
そこには穏やかな微笑みで俺を見る青年…セシルの姿があった。
昔、近所に住んでいた年上のお兄さんで、確か喫茶店を始めるとかでこの辺に引っ越した…と、バッツから聞いた事がある。

「ごめんね、急に…寝てた?」
「いや、うとうとしてただけで…つか、お久し振りです」

すっかり大きくなって!と、以前と変わらない笑顔を向けるセシルにつられ、俺も自然と笑ってしまった。

「確か、兄さんのいる高校に通っているんだってね」
「はい、バッツも一緒です」
「そうかぁ、やっぱり君達は一緒なんだ」
「はは…腐れ縁で」

ベンチから立ち上がり、伸びをする。
途端、大きな欠伸が出てしまい、俺は恥ずかしくて口を押さえた。

「眠そうだね」
「昨夜バッツの家で遊んでたから…あまり寝てなくて」
「寝かせてくれなかったとか?」
「はい…って、ええ!?」

驚いた顔の俺をセシルはにこにこしながら見つめてくる。
そう言えば、セシルって昔から妙に鋭いというか、カンが働くというか…。

「い、いや、ゲームしてたらあっという間に時間が過ぎちゃって…」
「うん、そうだろうと思ったよ〜」
「………」

あ、焦った…って、何も無かったぞ!無かったんだからな!!
俺は大きく深呼吸をして、心臓を落ち着けた。

「そうだ、今度僕のお店に遊びに来てね。バッツも一緒に」
「そ、そうですね…是非」
「バッツからも色々聞きたいしね!」

何を色々聞くのだろう…俺は一抹の不安を感じつつ、スーパーの袋を抱え軽く会釈をした。
セシルも軽く手を振って公園の出口へと消えていく。

ふと、携帯が鳴った。
着信はクジャからで、きっと痺れを切らしているに違いない。
俺は走って公園を抜け、バッツへの口止め方を考えながら家へ急ぐのだった。


〜続く〜


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2012 5.6 UP
ストロベリーに続きます
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