Happy White Day

※59現パロ
Be happy together
ホワイトデーネタ

買い出しに入ったスーパーで、ふと目に入った『ホワイトデー』の文字。
棚にはバレンタインとまではいかないが、色とりどりのお菓子が並んでいる…そういやもうそろそろだったな…。

思い起こせば約一月前、天にも昇る気持ちだったバレンタインでジタンから「三倍返し!」と、真っ赤に言われた思い出が蘇り自然と顔がニヤける。

『お返し何がいいかな〜』

ジタンが好きなもの喜ぶものは大体解ってはいる(と、思う)のだが…自分の為にしてくれた事を思うと、ただ買ってハイと渡すのも何だかなぁ〜と躊躇してしまう。
もちろん気持ちは大量に込めるつもりだけど。

あともうひとつ、ちょっとだけ頭を悩ませている事がある。
これは今まで内緒にしていたのだが、カンの鋭い彼にはいずれバレてしまうだろう…。
まぁ、でも実際そんなに気にするは思えないけれど。
とりあえずホワイトデーの件は置いといて、俺は買い出しを再開するのだった。



***



学校にて、春先とはいえまだ肌寒さが残る為、外での昼食を止め俺達は暖かい食堂に避難することにした。
話をしながらも一通り食べ終えたジタンは、ご機嫌にデザートのコーヒーゼリーを開け食べようとしたが何かを思い出した様に「あっ」と呟く。

「そういや、もうすぐホワイトデーだったな〜俺とした事が…忘れてたぜ」
「ジタンは沢山貰ったから、お返し大変なんじゃない?」

そうだな〜何て言いつつプラスチックのスプーンをくわえながらこっちを見ている。
も、もしかしてあの三倍返しの件だろうか…それとも…。

「バッツだって貰ったんだろ?だったらきちんとお礼しないとな」

小声で『俺以外にだぞ』と付けたしゼリーを食べ始める。
あーやっぱり…知ってたか…。

内緒にしていた事をあっさり見破られた…。
俺も数はジタンこそ多くは無かったが、女子から幾つかチョコレートを頂いていたりする。
もちろん、驚いた。
まさか自分にくるなんて思ってもみなかったから。

普段あれだけジタンに大好き、大好きと言っているのに、ちゃっかり他のコから貰っててしまったのが後ろめたくてつい、秘密にしてしまった。
またティーダあたりに聞いたのだろうか?いや、俺誰にも言ってないよな…。

「そ、そうだな。やっぱりしなくちゃマズイよな〜」

努めて明るく言うが、内心はちょっとドキドキしつつ弁当の残りを頬張る。
当のジタンはもくもくとゼリーを食べていたが、急にピタリと手を止め俺を更にじっと見つめる。
その視線は困惑というか、寂しげというか…何だか胸に突き刺さる様で…。

「やっぱり、貰ってたんだな…」
「へ??あ…うん」
「いいけど、別に」

そう言うとジタンは凄い勢いでゼリーを食べ終え、弁当箱も早々に片付け「ちょっと用事!」と、俺の視界から姿を消した。

呆然としつつも思考を働かせた結果、俺は食堂中に響き渡る大声を出してしまい、他の生徒の視線を盛大に浴びた。

ひょっとして、俺引っかかったのか…?



***



みっともない。
どうしてこんな気持ちに…。

バッツから逃げる様に飛び出した食堂から教室までの廊下を歩き、俺はさっきの光景を思い出していた。

ちょっと引っかけて聞いてみたけど、やっぱり貰ってたかー…。
いいじゃないか…俺が良くてバッツが駄目なんて、そんな事は…無いのだし。
実際勝負しようぜ!って言ったのは自分だなんだから。

じゃあ、何でこんなにモヤモヤするんだろう。
チリチリと胸の奥が痛い。
あんなに俺からチョコ欲しい!と、言ってたくせに…って、何を考えてるんだ俺は。

…嫉妬、なんだよな…これって、きっと。
バッツが貰った顔も知らないチョコの送り主達に対し俺は嫉妬しているんだ。

……マジか。

足取りが徐々に重くなる。
さっき自分がした行動がとても恥ずかしくて、情けなくて…同時にバッツに対して申し訳無くて…。
俺はとうとう歩くのを止め、俯きながら心の中でバッツに謝罪をするのだった。



***



あの後、結局俺はジタンに会えずじまいで、一人とぼとぼ帰宅した。
自室に入り鞄を床に投げ、ベッドに寝転び携帯を眺めるが、ジタンからのメールも着信も無い。

昼時の件を思い出す。
ジタンは何であんな顔をしていたんだろう…。
自分としては大して気にされず、ふーん程度で終わるかと思っていたのに…あれじゃまるで…。

頭の中でひとつの考えが浮かんだが、家のチャイムが軽快な音を鳴らし俺の思考は中断された。
誰だよ…と、のそのそと部屋を出てドアモニターを確認するとそこには昼に別れたきりのジタンが映っていた。

俺はドタドタと賑やかな足音を立て、急いでドアを開け招き入れるが当のジタンは「よう」と、言うも何だかそわそわして落ち着かない。
俺は居間で待ってて…と、声をかけキッチンへジュースを取りに行った。

冷蔵庫を開け、オレンジジュースのパックを取り出す。
何の話にせよ、ジタンがこうして自分に会いに来てくれたのがやっぱり嬉しくて、グラスにジュースを注いでいく。

ふと背後に人の気配がし、振り返ろうとしたら「こっち向くなって」と、ジタンの声がした。
そのまま後ろからぎゅっと抱きしめられ、俺はジュースのパックを落としそうになるくらい驚き固まってしまった。

丁度自分の腰あたりにジタンの腕が回され、背中に感じる暖かい温もりにようやく俺は今の状況を飲み込む事ができ、おそるおそるジタンに声をかける。

「ど、どうしたの?」
「今日はゴメン…」

おそらく昼の事を言っているのだろう…俺はそのままじっと動かずに次の言葉を待っていた。

「俺さ…みっともないんだよ、誰かも知らない相手達にすげぇ嫉妬してさ…」

腕の力が更に強くなり、声もいつもより弱々しい…俺はジュースパックを置きそっとジタンの手に自分の手を置いた。
後ろでジタンの身体が一瞬震えたが、力はそのままでじっとしている。

「俺も…ちゃんと言わなかったし…ゴメンな」
「バッツは悪くない」
「うーん…まぁ、でも俺なんかしょっちゅう焼きもちだらけだぞ?」
「…だけど、さっきみたいに八つ当たりしないだろ…だから今まで全部含めて謝るよ」

自分を抱きしめている手を優しく解き後ろを向くと、ジタンが目の前で自分を見上げている…その表情は少し泣きそうで…普段の勝気さとは全く違う顔にドキリとする。

「こっち向くなって言ったじゃんか…」
「これでおあいこって事で…さ」

お互い小さく笑い合い、俺はそのままジタンを自分の胸に抱き、髪に額に唇を落とす。

「くすぐったいって」

ジタンも俺の頬に唇を寄せクスクスと悪戯っぽい声を出しながら軽いキスをする。

「なぁ、ジタン…」
「ん?何だ?」
「もうちょっとずらして口にしてくれてもいいんだけどー…」

それまで笑顔だったジタンが、まるで変なモノでも見る様な目で俺を睨んで一言「調子に乗るな!」と、両手で頬を引っ張られた。

「い、いひゃい…!」
「ぶっ!!変顔!」

ジタンは息も絶え絶えに腹を抱え笑い転げている…あぁ、もう…せっかくの雰囲気が台無しだって。
でもきっと、いつか、もうちょっと近付きたい…。
俺はちょっと赤くなった頬を摩りながら、来るべきであろう将来に誓うのだった。


〜続く〜


*おまけ*
スコールとジタン。

「おーい、スコールこっち」
「久し振りだな」

ジタンから急に「会えないか?」と連絡があり、学校帰りにいつものファーストフード店で待ち合わせをした。
珍しくバッツが付いてこないのが不思議だったが…何かアイツに言えない話なんだろうか…。

「どうした?バッツは一緒じゃないのか」
「いや…実はさ…」

そう言ってジタンは鞄から白地の包装紙に青いリボンが巻かれている箱を取り出す。

「これは…?」
「この間さホワイトデーだっただろ、これバッツから貰ったんだけど…」

成程、そういう事か。
バッツといいジタンといい、嬉しい事は誰かに言わないと気が済まないのか…そして俺はまたターゲットに…。

「惚気けるなら他所でしてくれ」
「や、違うって!そんなんじゃないって!!」

慌てて否定するジタン曰く『俺の愛をたっぷり大量に込めた三倍返し手作りクッキーだぜ!』と意気揚々と渡されたらしい。
何だ、やっぱり惚気じゃないのか…?

「俺のマンション、バッツの部屋の下だろ…これを貰う前日さ、アイツの家から異様な音やら臭いやらしてさ…怖くて開けられねぇよ…」

ブルっと身震いをしながら箱を眺めるジタンの顔は何だか青ざめている。
どうやらこれを代わりに開けて欲しいらしいが…その役目は当然俺では役不足だ。

「せっかく貰ったのだろう、自分で開けたらどうだ」
「む、無理!お願いだよ、スコール…」

両手を合わせて懇願されるが、それではあまりにもバッツが可哀想に思え、俺は自分の鞄を持ち席を立つ。

「アイツの愛がたっぷり大量に入っているんだろう?だったら大丈夫だ……多分」
「多分って…!おいスコール待てってばー!!」

背後から「人でなしー!」だの何だの聞こえきたが、構わず出口まで歩きチラリ振り返った。
机に乗った例の箱を睨んだり、揺らしたり、臭いを嗅いだりしているジタンの姿が目に入る。

結局、やっぱり俺は惚気けられただけじゃないのか?と、思いつつも笑いがこみ上げて仕方がない。
今度、ジタンに箱の中身(クッキーである事を願う)を聞いてみるか…。
鞄を持ち直し、俺は店を後にするのだった。

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2012 3.13 UP
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