ぬくもり
※89
やや不真面目

夜も更け、休息をとるべくスコールとジタンはテントセットし、寝床の準備を始める。
簡素で狭いテント内であるため、2人同時に動けばどちらかともなくぶつかってしまい…。

…どんっ。

「あ、悪い」
「大丈夫だ」

大概、大雑把に動くジタンがスコールにぶつかる事が多い。
身体が一回り(以上?)小柄なのに、だ。
時々、リラックスしきった尻尾が床にだらん、と伸びており、スコールは踏まない様に細心の注意を払ってきた。
そのかいあって最近では、ジタンの小さな悲鳴を聞く事はほとんど無い。

「もうちょっと広いテントってねぇのかな…」
「モーグリに聞いてみたらどうだ?」
「うーん…でも、あっても値段高いよな…きっと」

これでもう一人増えたらむさ苦し過ぎる!と、ジタンは声を大にして言う。
そんな姿を見ながらスコールは、お前のサイズならそこまで窮屈にならないだろう…などと口には出さず、相変わらず心でツッコミを入れてみる。

それにスコール自身、そんな嫌じゃないのが本音だ。
普段なかなか行動に移せない『密着』とやらが出来てしまうかもしれない…!
狭いながらも楽しいテント生活…かもしれない…!
あれやこれや考えていたが、スコールの表情は相も変わらずクールそのもの…の、つもりだったがジタンには何か伝わっている様で…。

「何か言いたそうだな、スコール…」
「……」

ジタンに生温かい視線を送られ、バツが悪そうにスコールは顔を背け、そそくさと上着を脱ぎ身支度を整えていく。

「明日も早い、もう寝るぞ」
「へいへい…んじゃ、お休み〜」
「あぁ…」

ランプの灯りを落とし、2人は各々薄い毛布に潜り込む。時折、風で木々が揺れる音が辺りを包むがいつも通り静かな夜だった。

ジタンに背を向ける形で横になっていたスコールは、その音をじっと聞いていた。
さっき思った事は本当で、もう少し触れたい、近くに感じたい、だけど…言える訳が無い…こうしてそっと思うだけ…。
想像という妄想を何度した事か…少々、アブナイ傾向にあるかもしれないが、自分にはそれが精一杯だった。

どの位時間が経ったのか、背後のジタンがもぞもぞと動く気配を感じ、目を開ける。
眠れないのか…と、聞こうとした瞬間、同時に向こうも話しかけてきた為、スコールはセリフを飲み込む。

「ちょっと考えたんだけど、狭いのも案外いいかも」

後ろを振り返ろうとした瞬間、自分の背中にジタンがくっついてきた。

(?!)

…さて、一体これはどうしたものか…冷静を装いつつ、内心早鐘を打つ心臓の音がジタンに聞こえやしないか冷や冷やする。

「こうしてさ、くっつく事も出来るし」

クスクスと笑う声が、後ろから聞こえてくる。
あぁ、きっといつもの様に悪戯っぽい笑顔をしているに違いない…自分には到底出来ない、あの大好きな表情を。

「…そうだな」
「お、意外な答え」

つられてスコールも小さく微笑む。
恥ずかしさからか、そのまま動かず目を閉じるも不意にシャツを引っ張られた。

「なぁ…スコール今、どんな顔してる?」
「想像にまかせる」
「ん〜…笑ってる…かな?」
「…当たりかもな」
「マジで?!」

その後『滅多に見れないから見せろ!』と、スコールは背後から羽交い締めをされたり、押し潰されたりと、テントの中での攻防は夜中繰り広げられたとか。


〜fin〜


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2012 6.12 UP
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