3人寄れば…
※589
仲良しさん

バッツ、スコール、ジタンの三人は連戦を終え疲れた身体を休めるべく、森の中で暖をとっていた。
時間も定かではないが辺りは暗く肌寒く、辺りは完全に夜の雰囲気が漂っている。

この異世界には季節というものも存在しない様で、各場所を訪れた際、暑さ寒さを感じた覚えが無かった。
たが、今日は肌に刺す風の冷たさが尋常ではない。
女神に何かあったのだろうか…三人共、自然と焚き火の近くに身を寄せている。

「やけに冷えるな〜」
「こんなに寒いの初めてだぜ」

薄着のバッツとジタンは両腕を擦りながら、少し震えている。
ふとジタンは思い立ち、荷物の中から私物の黒いマントを取り出し身体を包んだ。

「ジタンずるい!俺にも貸してくれよ〜」
「バッツだってマントあるじゃん」

自分のマント一枚では全身を包み込む事は不可能なんだけど…。

「俺の身体はジタンと違ってコンパクトじゃないの!」
「何か引っ掛かる言い方だな…」

半分入れろ!と、ジタンのマントを引っ張るバッツと、それを死守するジタン。
スコールはそんな光景を、半ば呆れながら眺めていた。

「スコール、協力してくれよ」
「…自分でどうにかしてくれ」
「ひどっ!」

拒否られたバッツはじーっとスコールを見る。
スコールは自分達とは対照的に、ファー付きで長袖の暖かな服装だ。
何だかずるいぞ?と思い、バッツはまたダメ元でお願いをしてみる。

「なぁ、スコール」
「何だ?」
「沢山付いてるそのもふっとしたファー…ひとつ貸して!」
「断る」
「ケチ!」

ブーブー文句を言うバッツを横目に、スコールは焚き火に枝をくべる。
別にケチとかでは無く、このファー位では大した暖もとれないと思ったからだ。
決してコーデが崩れるからではない…ハズだ。

結局、バッツも荷物の中から私物の使えそうな服を取り出し、着たり巻いたりしていた。

「それにしても…どんどん寒くなってこないか?」

マントを被ったジタンが更に小さく縮こまる。
先程より風が強くなってきた。
木々も大きく揺れ、ざわざわと音を立て、身体や頬に冷たい風を吹き付ける。
もふもふファー付きのスコールも、腕をさすり寒さと戦っていた。

「この寒さ、一体どうしたのか…」
「せせせかいがななないてるのかももしれないぜぇ…」
「バッツ、何言ってるか解らないぞ…」

ガチガチと震える三人は更に焚き火に近付いたが、あまり効果はなかった様だ。
とりあえず手元の枝を火に投入しながらバッツは急に神妙な表情で口を開いた。

「聞いた話なんだけど…」
「「?」」

スコールとジタンがいつになく真面目なバッツの姿に黙って視線を送る。

「寒い時は裸で抱き合うとあったかいらしいぜ?」

ピタリと他二人の動きが止まり瞬間、バッツから波が引くように離れていった。

「ちょーっとタンマ!変な想像するなって。人肌が一番暖かいって事!」

バッツが聞いた話とは、雪山などで遭難したとかの緊急時での事らしい。
命の危険を回避するべくとる行動…。
解ってはいるが、一瞬自分達で想像してしまいスコールでなくとも眉間に皺が寄ってしまう。

「まさか俺達もそれをやろう!とか言うんじゃないだろうな…」
「や、あまりに寒いからさ…それもひとつの案として」
「おいおい、それは勘弁してくれよ〜」

素っ裸の時、敵が現れたらどうするんだよ…と、ジタンの言葉にスコールも同意した為、バッツの案は却下された。
全裸で戦闘って…想像するだけで何か大事なモノを失ってしまう気もする。

しかし、とても寒いのは事実なので、妥協案として『服を着たまま三人引っ付く』を提案し実行に移してみる。
やや強引にバッツは自らの衣服を総動員させ二人に近づいた。

「うりゃ!」
「うわっ!バカ、押すなって!!」
「うっ…(バッツ&ジタンの重みで潰れ気味)」

とりあえず大きめの服やらマントやら、その他諸々まとめて全員の身体に巻きつけたりかけたりした。
初めは各々文句が飛び交っていたが、段々と温もりが身体を包み込む。
それに反して風は益々強くなってきているが…。

「あーいい感じ、あったけぇ〜」
「ちょっと苦しいぜ…って、おい…尻尾勝手に掴むな!巻くな!」
「押しすぎだ…少しは遠慮しろ」

バッツの案は功を奏して、三人は凍える事無くじっと固まる。
全身がぽかぽかと気持ち良い…戦闘の疲労も重なり徐々に瞼が重くなってきた…。
寝るな…というスコールの言葉が聞こえた気もしたが、ちょっと位いい…よな?



***



数時間後。

見上げれば雲ひとつない青空が広がっている。
日差しはやや強く、初夏に近い。
草むらを歩く数人の足音が止まった。

「あれ?誰だと思ったら…」
「何でこんな所で寝てるんだ?しかも三人固まって」
「肉団子状態っスね〜」
「…暑苦しいな…」

セシル達は消えた焚火の傍で、布地にぎゅうぎゅう詰めの男達をしげしげと見つめる。
どうやらすっかり寝てしまった三人は額にうっすら汗をかいており、見るからに暑そうだった。
真ん中で潰れているジタンに至っては、少々唸り声が聞こえる。
一晩で気候がすっかり様変わりしてしまったのは、やはりここが不安定な世界だからだろうか…。

「昨日、僕たちの居た所は暑かったよね…?」
「仲が良いんだな!この三人は」
「そこは感心する所ではないと思うが…」

スタスタとティーダは三人に近付き、ちょんちょんとつついてみるが反応は今ひとつ。

「んじゃ、俺達もやってみるっスか?」

爽やかな笑顔を向けながら他のメンバーに問いてみるも『NO』の文字が表情から読み取れた。
とりあえず…取れる範囲で布類を剥がし、ちょっとスッキリした三人はもぞもぞと動き出す。
彼らが起きるのはもうすぐの様だ。


〜fin〜


*おまけ*

目を開けた視界に写すのは突き抜けるような青空、肌に日差しがちょっと痛い。

「うわぁ!暑い!暑いって!!」
「くっつくな!耳元で騒ぐな!!」
「……!?(何なんだこの状況は!)」

ガバっと起きた三人の目線の先には、ニコニコやらニヤニヤやら呆れやら色んな表情の仲間達が居たのだった。


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2012 2.3 UP
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