loss of memory
※589
記憶喪失ネタ

皆と別行動をとっていたバッツとジタンは、過去のカオス神殿内を偵察していた。
敵の察知ももちろんだが、何かお宝的にイイものがないかと二人は周囲を見回してみる。
崩れかけた城内に特に何も感じなかったので、早々に立ち去りスコール達と合流しようと再び歩き出した瞬間、背後に殺気を感じ二人は身構えた。

「こりゃ、お出ましだな…俺が片付けるからジタンはアシストよろしく」
「おう、気ィ抜くなよ」

まかせろ!と武器を構えながら振り返り、敵の方向に向かっていくバッツの後ろを見送りながら、ジタン自身も戦いに備え愛用の双剣を取り出し後を追う。

バッツは神殿内に突如現れたクジャのイミテーションの変幻自在な魔法を避けながら、武器、戦法を変え応戦していた。
アシストのジタンは助太刀のタイミングを計っていたが、上空にいる敵の構えを見てハッとする。
確かあれはクジャが得意とするアルテマだ。
回避出来れば問題無いのだが、タイミング悪くバッツは体勢を立て直している最中、そのまま直にくらったら大ダメージを受けてしまう…思わずジタンは声を上げ戦いの中に飛び出していった。

「バッツ危ない!」

少々手荒かと思いつつも、勢いをつけバッツを蹴り倒す。
そして自分もその場からすぐに去ろうとするも、足首に痛みを感じそのままよろけてしゃがみこむ。
『こんな時に…!』と、ジタンが舌打ちをしたと同時にそのまま魔法を浴び、冷たい神殿の石の壁に叩きつけられた。

「な…ジタン大丈夫かっ?!」

蹴られたバッツはすぐに後ろを振り返ったが、倒れたジタンはピクリとも動かない。
とにかく早く敵を倒し救命措置を取らなければ…!
非常事態に自分の精神が研ぎ澄まされていくのを感じ、魔法を避けながら敵の懐に一撃を与えどうにか倒す事が出来た。

戦闘の勝利の余韻を感じる事無く、直ぐ様ジタンの傍に駆け寄り呼吸、脈拍、外傷の有無など可能な限り調べていく。
多数の擦り傷はあるがどうやら大きな怪我は見当たらず、出血もしていない。

「ジタン、おい、ジタンってば!」

いくら呼んでも目を開けないジタンに頭部のダメージを考え、そっと抱きかかえると、一目散に仲間の所へ戻って行った。



***



秩序の聖域、大慌てで叫びながら帰って来たバッツにの皆の視線が集まる。

「どうしよう…俺のせいだ」
「お前が悪い訳じゃない」

ガックリ肩を落とすバッツに精一杯の言葉をかけるスコールだったが、今のバッツの耳には届いていない様だった。

「酷い外傷は無いけど、詳しく調べないと何とも言えないね」

横たわるジタンを観察しながらセシルが言う。
壁に打たれた衝撃で脳震盪でも起こして寝ているのかも…と、付け加えた。
とにかく呼吸はしているのだから、様子を見ようという事になりポーションやケアルで治せる擦り傷を治療していく。

それから数時間が経過したが、未だ起きる気配が無い。
ジタンの傍にはバッツがずっと心配そうに座り込んでいる。

「おい、少し休んだらどうだ」

見かねたスコールが飲み物を持ってやって来た。
バッツだって無傷だった訳ではないのだ。

「俺が変わりに見ている…」
「悪い。もうちょっ…」
「う、うぅ…」

飲み物を受け取ろうとした瞬間ジタンの呻き声が聞こえ、うっすらとジタンが目を開け、ぼんやりとした表情で二人の顔を見ている。

「おおおお起きた!ジタン大丈夫か?!痛いとこないか?!!」
「お、落ち着けバッツ」

心配顔の二人を前に(バッツに至っては泣きそうだ)ジタンの口から出た言葉に二人は耳を疑う事となる。

「あの…どちら様ですか?」

固まるバッツとスコール。

「(落ち着け俺)えーと、ジタン夢でも見ていたのか?」
「(冷静になれ俺)こ、こんな時に冗談を言うな…」

ゆっくりと起き上がり二人を見るジタンが首を捻る。
何か思い出そうとしている様だったが、やがてため息を吐くと…

「ごめんなさい、ここはどこでしょう…」

バッツとスコールがその場で聖域中に響き渡る叫び声を上げたのは言うまでもない。



***



「もう、二人共その情けない顔何とかしなよ!」

オニオンナイトの喝が飛ぶ。
彼より年上の二人は深いため息をついて壁に項垂れ、ブツブツ呟いている。

「そうは言ってもなぁ…いきなり『どちら様ですか?』だもんなぁ…それに何!あの口調…ジタンだけどジタンじゃないみたい…」
「……(夢か?これは夢なのか??夢なら早く覚めてくれ…)」

セシルや他の仲間の見解では、多分脳震盪による記憶喪失の様なもので、ここに来てからの出来事が抜けているらしい。
元々の世界の事も曖昧な為、自分の名前もうっすら覚えてる程度だそうだ。
そして、人格というか…雰囲気まで変わってしまい、益々バッツとスコールを困惑させた。

「と、言う訳で…バッツとスコールと一緒に居れば、その内思い出すんじゃないかな?」

君達はいつも一緒だったからね、とセシルはジタンをバッツとスコールの前に連れて行く。

不安気にこちらを見るジタン。
尻尾なんか今にも床にぺたんと落ちそうだ。
自分達以上にジタンはもっと辛いに違いない。
そんな姿を見ていたら、いつまでも現実逃避している訳にはいかない…二人は意を決してジタンの前に現れた。

「……よし!記憶が戻るまで頑張ろうなジタン」

パシッと自らの頬を叩きバッツは気持ちを落ち着かせ、スコールは大きく息を吸い込み心を鎮める。

「あぁ、共に頑張ろう」

パッと笑顔になったジタンに二人も笑顔で応える。
きっと大丈夫、どこかに出かけた記憶は戻ってくるさ…。


〜続く〜


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2012 4.10 UP
無駄に長くなったので2に続きます…
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