Birthday gifts ※589 現&学パロ 9さんハピバ話 |
ガラッと勢いよく教室のドアが開き、部活終わりのティーダがタオルで汗を拭きながら入ってきた。 「ふー…あれ?何してるんスか二人とも」 そこにはスマホを睨むバッツと、静かに文庫本を読むスコールの姿が。 「ジタンが来るのを待っている」 「そっか、お疲れッス!」 本から少し顔を上げ、スコールは答える。 その横では、うーん…と珍しく険しい顔をしているバッツが口を開いた。 「なぁ、スコール。もしかしてもう決まってるのか?」 「まぁ、な」 「何?!一人だけズルいぞ!」 唇を尖らせながらバッツは抗議するも、どこ吹く風なスコール…そんな二人をティーダは不思議そうな顔で眺めていた。 『何なんスかね〜…』 ロッカーから荷物を取り出し、身支度を整える。 時折、ティーダはチラチラと二人の方を気にしながら、鞄にタオルを突っ込んだ。 「で、スコールは結局何にしたんだ?」 「…秘密だ」 「え〜被ったら困る。教えてくれよ」 「それは無い…筈だ」 「けど、もしもって事もあるし…」 納得してない顔のバッツは、またスマホを見ながら唸っている。 「なぁ、二人とも。一体何の…」 ティーダが口を開いた瞬間、はっ!と大きく目を見開いたバッツがスコールに詰め寄る。 「ま、まさか、スコールお前…」 「?!」 「俺が今考えている、箱から飛び出してハピバー!プレゼントは俺でーす!をやるつもりだろっ!」 「……(違う…というか、これは突っ込んだ方が良いのだろうか…)」 文庫本を閉じて、軽くため息をついたスコールは一言、二言と苦言する。 それに対して納得のいかなそうなバッツは、スマホを見せながら説明している様だ。 ティーダはドアに手をかけながらで…あぁ、と呟く。 『ハピバ…成る程、そういう事か〜』 白熱する二人に軽く手を振り、ドアを閉める。 が、中から騒がしい声が漏れており、ティーダは苦笑しながら教室を後にした。 素早く階段を降りると、曲がり角から台本や書類を抱えたジタンが、勢い良く飛び出して来た。 「…っと、悪い。あ、ティーダ今帰りか?」 少しよろけながらも、直ぐに体勢を立て直す。 「大丈夫〜ジタン、お疲れッス!」 「お疲れ〜あ、そうだ。教室にあいつら居た…?」 「居たけど…あ、でも今は…」 「?」 「いや、何でもないッス!」 「??」 …じゃあ、とジタンは小走りで階段を登っていく。 その後ろ姿を眺めながら、ティーダはそっと心の中で呟く。 『誕生日、楽しみッスね〜ジタン』 後日、どんな話を聞けるか楽しみになってきたティーダは鞄をかけ直し、軽い足取りで学校を後にした。 *** 〜数日後〜 ふー…と、ジタンはロウソクの灯を消す。 その瞬間、パァン!とクラッカーの音を皮切りに、拍手が部屋中に響く。 「ジタン、お誕生日おめでとう〜!」 「あ、ありがとな」 「…おめでとう」 「スコールもっと大きな声で!」 「あはは、ちゃんと聞こえてるって」 テーブルの上には、苺が乗ったバースデーケーキ。 部屋はカラフルなモールやリボンで作った飾り付けで、若干派手な仕上がりになっている。 「それにしても、よくこんなに部屋をデコったなぁ」 ぐるりとジタンは部屋を見渡す。 『ん?』 ふと見ると、隣の部屋のドアが細く開いており、隙間から箱の様な物が見える。 『何だあれ?箱…?結構大きいけど…』 「はい、ジタンどーぞ」 ジタンが不思議そうに謎の箱を見ていると、バッツから取り分けたケーキを渡される。 「あ、サンキュー」 「いやー本当は飾り付け、もう少し控え目だったんだけどさ。ちょっと諸事情で材料余っちゃって」 「ふーん…なぁ、あれ…」 「……(丸見えじゃないか…)」 スコールはジタンが見ていた方向に例の箱がある事に気が付いた。 (あれ程片付けろと言っておいたのに…) あの後、始めは冗談かと思っていたスコールだったが、バッツが着々と準備を進めている姿を見て呆れ返り、再度苦言を呈す。 大丈夫!というよく分からないバッツの説得?に押し切られたが、昨日慌てた電話がスコールにかかってきた。 『一体どうし…』 『スコール、マズイどうしよう!』 『?』 『箱のサイズ間違えた!これじゃ小さい!!俺入れない!』 『……』 『さすがにもう間に合わないか〜はぁ…』 『だから俺は止めておけと何度も…』 結局バッツはしぶしぶ諦め、大急ぎで普通のプレゼントを買いに走り、使わなかったデコレーションアイテムはそのまま部屋を飾る事となり、現在に至る…。 「あぁ、あの箱?実は俺…」 バッツはへへっと笑いながら、ケーキにフォークを入れる。 「イリュージョン用だ」 涼しい顔をしたスコールがさらりと答える。 瞬間、バッツのケーキがふにゃ、と崩れた。 「へ?」 「は?」 「バッツがジタンに見せようと張り切っていたぞ」 「え?俺そんな…」 「マジかよバッツ!すげー楽しみなんだけど!」 「え?えぇ〜??」 物凄く期待に満ち溢れた瞳で見つめてくるジタンから目を逸らし、バッツはスコールに向けて口パクで抗議する。 それを受け流し、静かにケーキを食べるフリをしながら、スコールは笑いをこらえるのに精一杯だった。 〜fin〜 - - - - - - - - - - 2017 10.6 UP |