special to me! ※59 |
「ふーっ!キツかった〜」 「お疲れー」 ドサッと勢いよく草むらに腰を落とし、バッツは一息つく。 先程の戦闘は接戦で、アシストしてくれたジタンもあちこち吹き飛ばされていた様で、土埃にまみれだ。 「うわ、俺きったな…ん?あれ見ろよバッツ」 ジタンが指差す方向に、大きいとは言えないがキラキラと輝く湖が見えた。 周りには数本の木、さながらちょっとしたオアシスだ。 「顔ぐらい洗えねぇかな…ちょっと見てくる」 そう言うと汚れた服を叩き、ジタンは湖に向かって走り出した。 目の前を尻尾が掠めていく。 「相変わらず素早い…っと」 小さくなるジタンの後ろ姿を見つめながら、勢いをつけて立ち上がり、バッツ も湖に向かった。 *** 「よし、そんな深く無い…ひー!冷た!!」 ブーツを脱ぎ、ズボンの裾を捲し上げたジタンが湖に入って悲鳴を上げる。 「おっと、こいつも…」 手袋やカフス、ベストをぽんぽんっと岸辺に放り投げる。 そっと水をすくうと手からも冷たさが伝わり、思わず尻尾までブルッと震えた。 「だらしないな〜ジタン」 バッツは呆れながら、脱ぎた散らかしたジタンの服やら靴を集める。 冷たい、冷たいと騒ぎながらも顔や手を洗っているジタンをじーっと見つめる。 「うーん…」 「?何だよバッツ」 「いや、怒らない?」 「何が?」 怪訝な顔のジタンにバッツは言葉を続ける。 「ジタンの服ってさ、出てるの腕だけじゃない?」 「はぁ」 「だからさ、そうやって手とか足とか見るとさ…」 バッツはへへっと笑う。 当のジタンは訝しい表情のままだ。 「…臭そうとか思ってねーだろうなぁ…」 「そうそう…って違う、違う!」 「じゃあ、何だよ」 「何とか言うか…良いもの見ちゃったなーとかそんな感じ?」 訳が分からない、とジタンは尻尾で水面を叩き、バッツに向かって水滴を飛ばす。 「俺みたい、いやそれ以上に着込んでいるヤツ他にもいるだろ」 「まぁ、それはそうなんだけど…ジタンのが見れると、俺は嬉しいの」 「………」 「………」 二人して動きが止まり、一瞬の静寂が辺りを包む。 バッツ的には『ジタンは特別』という意味を込めたつもりらしい。 「……バッツってさ、もしかして…」 「え?」 ドキリとするバッツを真っ直ぐ見つめるジタンが口を開く。 「変態?」 ガクッと項垂れるバッツの髪を、ひゅう…と風がそよぐ。 「そう実は…って、そんな訳無いだろー!」 そのままバッツは湖に飛び込み、ジタンに向かって水をかける。 ジタンの悲鳴とバッツの笑い声が周囲に響き渡った。 〜fin〜 - - - - - - - - - - 2018 5.9 UP 59の日なので |