I fancy you

※5→9&589?
ぐだぐだ
「は?」
「何も言うなスコール…そう、俺は決めたんだ…ジタンに告白する!」
「懺悔でもするのか?」
「違うって、あ.い.の.こ.く.は.く!」
「……」
「あー緊張しちゃうな〜…という訳でスコール、協力よろしくな!」

緊張という割には若干浮かれ気味のバッツに、俺は思い切り冷ややかな視線を送る。
確かにこの二人は仲が良い。
よく一緒に行動する事も多い(不本意だが俺も含まれている事が…多い)おそらくウマが合うのだろう。

…いやいやいや、根本的な部分からしておかしいじゃないか。

大体、あのジタンだぞ。
俺は離れた場所で、ティナと楽しそうに会話をしているジタンをチラリと見る。
普段から女子に関して何かと騒いでいる奴だぞ。
そんな奴に告白でもしてみろ、色々とツッコミたい事を抜きにしても玉砕するのがオチだ。

「とても成功するとは思えないが…」
「う…そ、それは…頑張るよ」

(頑張る、とは)

「いずれはお別れ、だろ?だから後悔したくないんだ」
「……」
「なーんて、ちょっと格好つけてみたり〜」

へへっ、とバッツは照れた様に笑うと、視線を遠くのジタンに向ける。
その顔は普段よりもっと穏やかで、暖かい雰囲気に満ちている…様に見えた。

本気という事か。

(そうだ、いつだってこの男は大真面目なんだ。素直に、真っ直ぐに…)

「…分かった。で、俺は何をすればいいんだ」
「!…スコール!!」

上手くいくかいかないかは自分には関係無いと思っていたが、喜ぶバッツを見ていると少しだけ応援したくなった。
まぁ、ほんの少しだけだが…。




***




「ジタンこっちこっち」
「何だよ、急に話って…あ、スコール。何して…」
「あ、いや…その…」
「いいから、いいから、ジタンはこっち」

バッツにぐいぐいと腕を引っ張られ、茂みの奥へと消えて行くジタンを見送った俺は、近くの木に寄り掛かる。
バッツの計画は、とりあえず陣営近くの森にジタンを連れて行き、告白するという何ともざっくりとしたものだった。

『おい、何か適当過ぎないか?』
『だって、遠くに行ったら皆が心配するかもしれないだろ?スコールには見張りを頼む、な?』
『だからって…』
『雰囲気バッチリだと緊張しちゃうしさ…なるべく奥に行って、皆からは見えない様にするよ』

頬を赤らめるバッツがいかんせん気持ち悪いが、本人がそう言うなら仕方ない。

(伝説の木の下とか、夜景の綺麗な場所とか色々あるだろ…いや、まぁいいか)

腕を組み、仲間の方へ目を向ければ、皆それぞれの時間を過ごしている様だ。
ぼんやりと眺めていると、ふいに声を掛けられた。

「何をしているんだ?」

(WOLか…さて、どうしようか)

「その…見張りをしている所だ…いつ敵が来るか解らないからな」
「そうか…用心するに越したことは無い。すまないが、頼んだぞ…私はコスモスの所へ行ってくる」
「了解した」

あっさりと通り過ぎていくWOLに罪悪感を感じつつも、あの二人の所在を聞かれなかった事に胸を撫で下ろす。

(純粋なのか…いや、天然なのか…とりあえず良かった)

「あぶなーーーーい!!」

瞬間、猛スピードで何かが目の前に迫って来る。
間一髪で避けたが、それは後ろの大木に煙を上げながらめり込んだ。

「なっ…?!」

(…敵襲か…って、ボール?)

「ごめーん、大丈夫っスか?」

手を大きく振りながら、苦笑いのティーダと慌てた表情のフリオニールがこちらに向かって走って来た。

「だから手加減しろと言ったのに…スコール怪我はないか?」
「……あ、あぁ(殺す気か!)」
「悪かったって…ん?ところでスコール一人なら一緒にどうっスか?」

ひょい、とティーダは大木にめり込んだボールを取り、指先で器用にくるくる回す。

「珍しいぞ、ティーダの世界で流行っている球技だそうだ」
「いや、その…見張りをしてるので大丈夫だ」

とてもじゃないが、手加減出来ないティーダのボールを受ける自信が俺には無い。
フリオニールはよく付き合っていられるな…。

「見張りか…一人でさせておくのも危ないな、俺も協力させてくれ」
「じゃあ、俺もやるっスよ〜」

(…何、だと…)

「だ、大丈夫だ。一人で問題ない…」
「スコールは強いから安心だが、たまには俺達にも頼ってくれ」
「そうっス!」

申し訳無さそうにしているフリオニールと、キラキラと純粋な笑顔を見せるティーダに心が痛む。

「気持ちだけ受け取っておく…ほ、本当に大丈夫だ…」

クールに冷静に応対…慣れてはいるが、仲間にはあまり嘘をつきたくないものだ…。
結局、じゃあ何かあれば…とティーダとフリオニールはチラチラとこちらを見つつ、立ち去っていった。

(……疲れた)

バッツとジタンの姿は見えないが、思わず軽く睨みながら後ろを振り返ってしまう。
全く、変な気を使う位なら公開告白でもすればいいんだ…という訳にはやっぱりいかないか…。

「どうしたの?スコール」
「?!」

思わず出そうだった声を必死で飲み込み、咳払いをして誤魔化す。
いつの間に近くに居たのか、にこにこと微笑むティナと怪訝な顔のオニオンナイトの姿があった。

「一人で何やってんの?」
「…み、見張りだ」
「へぇ…あんまり危ない気配無いけど」
「警戒を怠る事は無いだろう、いつ敵が来るか分からない」
「あの二人は?」
「あ、あの二人も別の場所にいる…」

ふーん、とオニオンナイトが疑う様な視線をこちらに向けてくる。
全く…カンの鋭い…。

「スコール達偉いね、じゃあ私達も他の所を見に行こうか?」
「まぁ、ティナがそう言うなら…」
「じゃあね、スコール。気を付けてね」
「……あぁ」

半分納得いかなそうなオニオンの手を引き、ティナ達は立ち去って行った。

(ふぅ…森の方には行かないでくれ…いや、行かない方がアンタ達のためだ)

何とかしのげた感が否めないが、もう成功しようが失敗しようが早く告白とやらを終えて、早く帰って来てくれ…。
俺は腕を組み、再び木に背を預ける。

「スコールお待たせ」
「手伝いにきたぞ」

ガクッと肩を落とす。
バッツかと思いきや、セシルとクラウドが武器を背に、共に俺の目の前に現れた。

「な、何だ…」
「さっきWOLに会ってね、スコールが一人で見張りをしてるから、手伝ってあげてって」
「あぁ、今はあまり不穏な気配はしないが、いつイミテーションが来るかも分からないしな」
「……(まさかのWOL)」

大真面目な表情の二人に、どうやってこの場を離れてもらうか慌てて考えるが、全く浮かばない。
必死に断るのも悪いし、何より怪しさ全開だ。

「僕達はもう少し森の奥を偵察してこようかな」
「そうだな、固まっていては効率が悪い」

セシルの視線が自分の背後にある、森の方に向いている。
いや、ちょっと待ってくれ…そっちは駄目だ。

「じゃあ、行って来るね」
「こっちは引き続き頼んだぞ、スコール」
「ちょ…!」

思わず手が出てしまい、掴んだのはセシルのマントで…。

「あっ」
「あ」
「あれ?」

三人の声が重なった後、轟音と共に木が倒れる。
バランスを崩したセシルが倒れ込んだのは、さっきティーダがボールをめり込ませた木で…そう云えば俺も何度も寄りかかっていたな…。
そうか、そんなに脆くなるほど強烈なシュートだったのか…良かった、参加しなくて…。

何故か悠長にそんな事を考えながら、倒れた木の方と共に俺達三人も地面に手をつく。

「大丈夫か?!」
「皆、どうしたの?!」

背後からティーダ、フリオニール…ティナやオニオンナイトが駆け寄って来た。
俺も含め、全員の視線の先にはジタンを抱きしめるバッツの姿が。

(…おい、なるべく遠くに行くんじゃなかったのか?)

「あれ?皆が急に現れ…」
「バッカ、離れろ!!」
「ええっ!ジタン何で…ぐふっ!」

ポカンとこちらを見るバッツの腕の中から、何とも素早い動きで抜き出たジタンが、実に華麗な一撃をバッツにお見舞いし、そのまま宙へと消えた。

「あぁ〜〜〜ジタン待って、まだちゃんと返事聞いてないんだけどーー!!」

良い雰囲気だったのに!と、慌てて後を追うバッツの姿もあっという間に宙に消える。
おい、こら待て。
何か言う事があるだろう。

「スコール…ごめんね」

ぽん、と申し訳なさそうにセシルが俺の肩に手を置く。

「まさか、そんな大任を背負っていたとは」

更に反対の肩に、クラウドが手を置いた。

(穴が合ったら入りたい…)

「ジタン素早いっスね〜今度一緒にブリッツやりたいなぁ」
「バッツも凄いスピードだったな!」
「ふふ、皆楽しそうだね」
「そ、そうかな…」

(役目は終わった…後は頑張ってくれ、バッツ)

楽しそうな仲間の笑い声を聞きながら、俺は誰にも見えない所でニヤリと笑った。


〜fin〜


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2017 6.10 UP
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