マシュマロ
※59
短文

夕食も終わりまったりとした時間の中、ジタンの隣には焚き火を見つめる青年がひとり…。

(バッツ真剣な顔してるな〜)

そんなバッツの手には細めの枝、先端には真っ白なマシュマロが刺してある。
それを、そっと炎にかざしゆっくりと…かつ丁寧に回転させている姿はまるで…。

(職人…なんて)

「……な」
「ん?何か言った?」
「いや、随分と真剣な顔してんなーって…」
「そんな顔も素敵!とか?もう、困っちゃうな〜」
「バカ、ちげーよ」
「何だ違うの?っとと…あぁ、焦げ過ぎた…」

がっくりと項垂れるバッツは本気で残念そうにしてて、ジタンはちょっと悪い気がした。

「俺が話しかけたせいだな、悪い」
「はは、気にすんなって。まだまだ沢山あるし!」

バッツは篭にどっさり入ったマシュマロをひとつつまみ上げ、再び枝の先端に刺し火に近付ける。

「今度こそ、美味しく焼き上げてやるからな〜」

パチパチと焚き火に照らされたその顔は、やっぱり真剣で…ジタンは悔しいが、一瞬ちょっと格好いいとか思ってしまった。

(いや、焼きマシュマロ作ってるだけなんだけどさ…)

「ジタン」
「…な、何?」

いきなり名前を呼ばれて、ハッとする。

「そんなに見つめられると、流石に俺でも気になるっつーか…」
「み、見てねーよ!」
「やだなぁ、そんなに好きなの?…マシュマロ」
「誰がっ…へ?」

思わず間の抜けた声が出る。

「だから、マシュマロ」
「………」

はい!とジタン目の前にほんのり焼き色のついた、甘い香りのマシュマロが差し出される。

「大好きなんだよな?」

ニヤリと笑ったバッツの顔に気付かないフリをしながら、素早く枝を奪いマシュマロにかぶり付く。

「…!あっつ!」
「あはは、ジタンがっつくなって!」

少し涙目になりながら、口を押さえる。
そんなジタンの姿を見つめるバッツの表情はとても優しい。

「お味はいかがでしょう?」
「……美味しい…」

(何か変な気分だ…)

怪訝な表情とは裏腹に、ジタンの心の中は妙に暖かい。
それはまるでバッツの作ったマシュマロの様に、甘くとろけていった。


〜fin〜


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2017 3.24 UP
じょうずにやけました〜
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