notebook ※89? 学パロ |
入学以来、前の席に座るジタンの頭を眺めながら過ごしてきた。 (まぁ、名簿順なのだが…) 時々落ちて(居眠り)より一層視界良好になれば、黒板も良く見えるしノートもとり易い。 だが、その後の休み時間になると、いい笑顔でジタンは前の席から振り返る。 その時の台詞は決まって… 『悪い、スコール。ノート貸して』 本気で悪いと思ってないのは明白なのだが…へへっ、と笑うジタンに俺はわざと嫌味っぽくため息をつき、ノートを渡す…二言、三言の小言を添えて。 『分かった、次からは気を付けるって!』 お約束の言葉に、俺は更に抗議の声を続ける…ほんの少しだけだが。 『ホント、ホント…いやースコールのノート見やすいからさ…いつもありがとうな』 そこまで言われるとさすがに俺も、もう何も言えなくなる。 …そんなやりとりが日常茶飯事だった。 それも数か月経てば回数が減り、最近ではノートを貸すことも少なくなってきた。 真面目に授業を受けている(であろう)ジタンの後ろ姿を、俺は少し寂しい気持ちで眺めていた。 寂しいという言葉が適正かどうかはさておき、先日行った席替えで、事情が変わってきた。 幸か不幸か?俺とジタンの席が入れ替わったのだ。 「おい、ジタン」 「…何だよ」 ちょっと怒気を含んだ声で、振り返った俺を睨むジタン。 「その…席を変わるか?」 「平気。見えるし」 「……そ、そうか?」 「……何が言いたいのかなぁースコール君は…」 若干、八つ当たりされた気がする…。 ニコニコしてるが、何で逆に怖さを感じるのだろう…。 「ま、またノートが必要なら言ってく…」 「大丈夫。お気遣いどーも」 (全く…素直じゃない) 「何か言ったか?スコール」 「い、いや…別に」 (まぁ、ジタンらしい…か) *** 数日後…不意に背中を叩かれ、振り返った俺の目には真っ赤なジタンの顔が。 「わ、悪いんだけど…やっぱりノート見せてくれ…」 恥ずかしそうにお願い!と手を合わせるジタンの姿が、いつもと違って可愛らしく見えてしまった俺は、速攻首を縦に振った…らしい(バッツ談) 「ごめんな、スコール…一個貸しだな」 「いや、いいものを見たからな、±ゼロだ」 「いいもの?」 「あ、いや…その、何でもない…」 〜fin〜 - - - - - - - - - - 2016 8.12 UP |