あのこはどこに
※59
Where is he?

AM11時。

秩序の某所、すっかり日も高くなった頃、テントから這い出る男がひとり…。

「あれ?ジタンは??」

(起きた第一声がそれか…)

慣れた手つきで武器のメンテナンスに勤しんでいたスコールは、呆れた視線をその男、バッツに送る。
そんな事はお構いなしに、欠伸をひとつ…バッツはキョロキョロと周囲を見回す。

「クラウド達と探索に行っている」
「えー、誘ってくれても良かったのに〜」
「お前が中々起きないから、行ってしまったぞ」
「ちぇっ、残念」

不満そうに唇をとがらせ、バッツはまたテントに潜り込む。

「追いかけないのか?」
「すれ違ったら嫌だし…帰って来たら起こして〜」
「……」

(俺にずっとここに居ろと…)

小さなため息を吐きながら再び作業に戻るスコールだったが、途中ティナとオニオンに呼ばれ、その場から離れた。

(悪いなバッツ、後は自分で何とかしてくれ)



***



PM2時。

ガチャガチャと大きな音で目が覚めたバッツは、淡い期待を胸に秘め、テントから勢いよく顔を覗かせた。

「ジタン!おかえ…」
「あ、中に居たのかバッツ」
「フリオニール、私も半分持とう」
「僕も持つよ…ふふ、バッツもう昼過ぎだよ」

目の前には大きな荷物袋を抱えたフリオニールとWOLとセシルが立っていた。
どう見ても自分の待ち人ではない…がっくり肩を落とし、またテントに戻ろうとするバッツにフリオニールが声をかける。

「バッツも見てきたらどうだ?クラウド達がお宝を沢山持って帰って来たぞ」
「いや、俺は…って、そうだジタンもいた?」
「あぁ、いたぞ。彼の目利きは助かるな」
「僕達も色々集めて来たから、見てもらおうかと思って」

それじゃあ…と、ようやくテントから出たバッツは三人に礼を告げ、足取り軽く向かって行った。



***



PM2時半。

「おーい、クラウド」

大きな袋から素材やら何やら、色々取り出しているクラウドにバッツは声をかけた。

「何だ?」
「俺もいるっスよー、バッツも何か貰いに来たの?」
「いや、違う。ジタンここにいるかと思って」
「さっきまで居たのだが…オニオンに呼ばれて森の方へ行ったぞ」
「また、すれ違い…」

明らかにテンションがダウンしていくバッツに、ティーダがあれやこれやとアイテムを渡そうとするも、ふらふらと森の方へ歩いて行った。

「勿体無いっスね〜こんなにあるのに」
「欲しければ後でまた来るさ…が、今はアイテムより大事な事があるのだろう」
「何なんスか?それ」

再び袋へと向かい黙々と作業をするクラウドの横で、頭の中が『?』でいっぱいのティーダが、バッツの消えた方向を眺めていた。



***



PM2時45分。

木漏れ日とそよ風が心地良い森の中を、バッツはひたすら歩いていた。
そういえば、森のどこに居るかまでは聞かなかったなー…キョロキョロと周囲を見渡すと、前からティナとオニオンの姿が見えてきた。

「やっぱりジタンに頼んで正解だったね」
「うん、そうだね…あ、バッツ」
「えーと…二人はジタンと一緒じゃないの?」
「(いきなり…)ジタンなら奥の一番高い木の所で休んでるよ」
「?」
「あのね、実は…」

ティナ曰く…髪飾りのリボンが外れ、強風に舞い、森の奥にある木に引っかかり中々取れなかったらしい。
そこで、ジタンに助けてもらったらしい。

「結構、高い場所にあったから、最初スコールに頼んだんだけど、枝が頼りなくて…落ちそうで危なかったの」
「ま、まぁ僕も木登りぐらい出来るけどさ!ジタンの方がすばしっこいし!」

ちょっと残念そうな顔をしているオニオンに、優しい眼差しを向けるティナ。

「もしかして…バッツはジタンを探しているの?」
「うん、さっきから全然捕まらなくてさー」
「今なら大丈夫だと思うよ」
「今なら…?」
「一休みする、って言ってたから…」

じゃあね、と軽く手を振り、ティナはオニオンと共に森の入り口へと歩いていく。
バッツは『よし!』と気合いを入れて、足早に奥へと進んで行った。



***



PM3時。

「ただいま、戻りました」
「あ!ティナお帰りっス〜」
「僕もいるんだけど」
「あはは、オニオンもお帰り〜」

ティナは、賑やかな場所から少し離れた所に居るスコールを見つけ、近寄る。

「さっきはどうもありがとう」
「いや…別に、俺は何も…」
「帰りにバッツに会ったんだよ」
「そうか…」
「やっと、ジタンと会えたかもしれないね!」

クスッと笑うティナにつられ、思わずスコールも笑いそうになり、咳払いをする。

「おーい、二人とも〜セシルがお茶にしようって!」

向こうで大きく手を振っているティーダに、ティナが応える。

「あ、でもまだバッツとジタンが帰って来てないっスね」
「うん、いいんじゃないかな」
「そうだな、今はいいだろう」
「だが、心配だ。敵が近くにいたら…」
「大丈夫だ!あの二人は強いからな!」
「そーそー大丈夫。はい、ティナお茶」
「わぁ、美味しそう。スコールもはい、どうぞ」

若干、噛み合う様な合わない様な皆の会話を聞きながら、スコールは受け取ったカップに口を付け一息つく。
陽が暮れるまで帰って来なかったら、邪魔…じゃなくて迎えに行くか…等と保護者的な思いを頭に浮かべながら…。


〜fin〜


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2016 4.29 UP
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