好晴
※89現パロ
Under Lover

(…朝か)

ベッドにもたれて眠っていたスコールは、カーテンの隙間から覗く朝日に目を細め、ゆっくりと身体を起こす。
いつの間に掛けられたのか、肩から毛布が滑り落ち足元に落ちる。

(これは、あいつが…?)

視線をベッドに移せば、目の前で眠っていた少年の姿は無く、溶けきったアイスノンだけが枕の横に置かれていた。

(もう、出て行った…大丈夫なのか?)

別に、お礼とかそういうのを期待していた訳では無く、純粋に心配をしている自分に驚き苦笑いをする。
スコールは立ち上がると、思い切り部屋のカーテン開けた。
外は正に好晴で、昨夜の雨はすっかり止み、光を受けた雨粒がキラキラと輝く。

(あの路地裏に、また帰ったのだろうか)

スコールは街並みを暫く眺め、部屋を後にした。



***



「おい」

しかめっ面のスコールの前には、正座をして縮こまる少年の姿が。

「…ご、ごめん…勝手にお風呂借りました…」

居ないと思っていた少年が、バスルームから急に出てきて、スコールは柄にも無く大声を上げそうになった。
それを隠す為に、少々強めの口調になってしまう。
しゅん、と肩を落とす少年にチクリと胸が痛む。

「いや…別に風呂はいいのだが…一声かけてくれ」
「よく寝てるから起こすのも悪いかな〜と思って…」

前回同様、サイズの合ってないバスローブを無理やり着た少年は、苦笑いをしながら頭を掻く。

「その…た、体調は良くなったのか?」
「へ?」
「熱だ」
「あ、もう汗かいてスッキリ!スコールの看病のお蔭かな〜」

二カッと笑顔を見せる少年につられて、思わずスコールも口元が緩む。

「じゃあ、そうだな…」
「分かってるって、すぐ出ていくから…」

申し訳なさそうな表情をしながら少年はゆっくりと立ち上がり、ソファに掛けてあった自分の服を抱える。
窓から降り注ぐ陽の光が、そんな少年の姿を照らす。
金色の髪が映え、とても綺麗だなとスコールは思ったが、同時に妙な照れ臭さを感じる。

「いや、その…」
「?」

言いかけた言葉の続きが中々出てこない。

(別に恥ずかしいセリフを吐く訳じゃないのに、何で言えないんだ)

心の中で頭を抱えるスコールは、自分の性格を少しだけ恨む。
きっとバッツあたりなら気さくに言えるのに。

「腹は減ってないか、と思って…」

(そこはただ『一緒にご飯を食べよう』でいいじゃないか)

不思議そうにスコールを見つめていた少年の顔が、急にぱぁっと明るくなる。

「減った!もう、ぺこぺこだぜ〜」
「そ、そうか…なら外にでも…行かないか?」
「行く!ちょっと待ってて、すぐ着替えるから!」

そう言うと、少年は思い切りバスローブを脱ぎ去った。

「!おい、ちょ、待て」
「へ?」

慌てて目を逸らすスコールを気にもせず、少年はシャツを広げる。

「なぁ、何食べよ…って、あれ?」

ボタンを止めながら少年が振り返ると、そこにはスコールの姿は無かった。
奥の部屋の方で、何やらガシャンと騒がしい。
少年は首を傾げると、再び急いで着替え始めるのだった。


〜続く〜


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2016 3.30 UP
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