ここにいるよ
※589
5さん視点
色々妄想

明日はいよいよ混沌の神との最終決戦という局面を迎えた夜、心の中に様々な想いを抱えながら皆、野営にて夜が明けるのを待つ。

この戦いには全世界の希望がかかっている。
もちろん勝利あるのみ、だ。
その為に秩序の神に呼ばれたのだから。

勝ったら元の世界に帰る事だろう。
戦闘を繰り返し、コスモスが託したクリスタルの力を得た俺は、ようやく記憶の欠片が埋まってきた。
自分達の世界はどうなっているんだろう。
皆、元気だろうか。
俺の事忘れてない…よな。

そんな望郷の念も無いわけじゃない。
ただ、ここにいた記憶は?
仲間との日々、敵と傷の絶えなかった戦いは忘れたくないと俺は思う。

パチパチと炎が上がる焚火の前に座る俺、スコール、ジタンの間には、いつになく穏やかな時間が流れていた。
話したい事は沢山あった筈なのに、何故だろう…今夜は上手く言葉が出ない。
普段だったらスコールに騒がしい、と怒られる位なのに。

「…楽しかったな、この旅も」
「俺も」
「…不謹慎だが…俺もだ」

辛かった事もあったけど、お前達がいたから頑張れたんだ。
だから明日も…。

「きっと勝つ事ができるさ」
「あぁ、そうだな」
「当たり前だ」

そう、きっと。
成し遂げてみせる。



***



死闘の末、俺達は勝利を収めた。
この悲しみに満ちた世界もやがて終わり、そして始まるのかも知れない。

気が付くと見渡す限りの青空、爽やかな草原。
これがこの世界のすべて。
本当に、本当に全てが終わったのだ。

ふと、俺は前を歩く二人を見る。
俺より年下のくせに妙に大人っぽいかと思いきや、意外と歳相応なヤツと何だか波長が合って、明るくて面白くて尻尾がよく揺れるヤツ。

…この二人には沢山助けてもらったと思う。
罠に嵌っても自分を見捨てないでくれた、助けてくれた。
戦闘の練習とか言ってヘトヘトになるまで闘ったり、お宝集めに精を出しすぎて怒られたりもしたっけ。
賭け事での戦いは…シャレにならなかった気がするな。
そんな思い出が鮮明に蘇ってくる。

「もし、また三人で旅が出来たら楽しいだろうな!」

つい、口から出たその言葉に二人共歩くのを止め振り返った。
もし、また、いつか…そんな事は無いことは俺も奴らは解っている。
でも…でも…そう願わずにはいられない。

「そうだな!今度こそお宝探しは負けねぇぜ!」
「またお前らのお守りは御免だ」
「スコール、そんな事言っても顔が笑ってるぞ〜?」

あぁ、皆同じ気持ちなんだ。
今まで、元の世界でも旅を続けていた自分にとって出会い別れは必然で、そういう機会が多かったのに…どうしてこんなに心が揺らぐのだろう。

所詮は夢物語…その言葉に儚さを感じつつも、追憶の欠片には皆との思い出が散りばめられている。

大丈夫、忘れない。
また三人で旅をする事は叶わない約束だけど、この戦いの証を胸に刻んでいこう。

「楽しい時間って何であっという間なんだろう」
「ホント、同感だぜ」
「全くだ」

これからも勇気と希望を胸に俺は歩き出す。
ちょっと照れ臭いけれど、何かを抱え込んだ時は思い出すだろう…仲間の笑顔を…。


〜fin〜


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2011 12.14 UP
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