Happy birthday with lots of love
※89?
8さんハピバ話

「暑い〜…良かったぜ、休む場所見つかって」
「そうだな」

何故かここら辺は気温が高く、体力温存…と、俺とジタンはたまたま見付けたオアシスで、束の間の休息を取っていた。
草むらに寝転がるジタンは、空をボーっと眺めたり、伸びをしたり、時々転がったりと忙しい。
俺は木を背もたれに座り、普段と変わらず武器の確認に勤しんでいた。
こういうのは訓練されたものなのか、それとも心配性なだけなのか…。
暫く、カチャカチャという金属音と、時折吹き抜ける風の音だけが耳に入る。

「あ、そうだ!俺、スコールに聞きたい事があったんだ」

ジタンは急に大きな声をあげ、ニコニコと機嫌の良い笑顔を見せる。
立つのが面倒くさいのか、ごろごろと回転しながら俺との距離を縮めてきた。

おい、草が思いっ切りくっ付いてるぞ…。

「…何だ?」
「んー、スコールの誕生日っていつ?」
「は?」

思わず出た間の抜けた声を隠す為に、俺は軽く咳ばらいをする。
誕生日…自分が生まれた日…。
当たり前のことが頭をよぎるが、曖昧な記憶のせいか、ぼんやりとしか思い出せない。

「確か…暑い季節だった…様な気がする」
「スコールも覚えてないか〜…まぁ、俺もなんだけど」

へへっと笑いながらジタンは言葉を続ける。

「いや、この間皆とそんな話をしてて…この世界は暦もあったもんじゃないけどさ…誰か覚えてたらパーティでもやっちゃおう!って」
「……(ただ騒ぐ口実が欲しいんじゃないか?)」
「その顔、呆れてるだろ…でも、きっと嬉しいと思うんだよ。皆に祝ってもらうのってさ。」
「……」

自分のイメージする誕生日パーティは確かに暖かい雰囲気のものだ。
皆におめでとう、なんて言われるのは少し恥ずかしけれど。

「そうだな、嬉しいとは思うが…」
「だろ?だろ??でも、これがだーれも覚えてないんだよなぁ」
「残念だったな」

ちえっ、とつまらなそうに唇を尖らせたジタンは、寝転がりながらうーん…と、考え込む。

「じゃあ…いっそのこと今日暑いから、スコールの誕生日にしちゃおうぜ」
「は?」

また、間の抜けた声が出てしまった…急に何を言うのかと思えば全く…。

「早速、ベースに帰ったら皆で準備しなくちゃな!」
「俺を騒ぐ口実に使うな」

ウキウキとはしゃぐジタンについ、出てしまった言葉。
素直に喜べない自分の性格が恨めしい…。

「…そうか、スコーは騒がしいのあんまり好きじゃないもんな…」

しょんぼりと肩を落としながらジタンが呟く。

「じゃあ…俺と二人っきりならいい?」
「は?」

本日三回目の声が出る。
思わず固まる俺の目の前には、いつの間に近付いたのかジタンのニッと笑った顔。

「しょうがない、恥ずかしがり屋のスコール君のために、俺がお相手いたしましょう」
「は?」

本日…以下略。
困惑&呆けてる俺の手をうやうやしく取ろうとするジタン…慣れてるな…って、おい、やめてくれ。

「ぶっ!スコールの顔!!」
「!!」

急に吹き出したジタンは、草むらに転がり、肩を震わせたまま、俺に背を向け必死に笑いを堪えている。

「ぷっ、くくくく…」

草まみれのジタンは、とうとう堪え切れないのか吹き出した。

「……(そんなに祝いたいのか?)」

ならば…と、俺は思わず視界に入ったジタンの尻尾を握りしめた…やや強く。

「それなら誕生日プレゼントも貰っておくぞ…」
「ちょ、何言って…」
「ありがとう、ジタン」
「?!」

瞬間、オアシスに何とも言えない悲鳴が響き渡った。
大丈夫、お礼はちゃんとするからな。


〜fin〜


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2015 10.3 UP
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